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預金以上に貸し出せる「信用創造」について

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投稿金融論入門
金融論における「信用創造」の考え方について、初心者向けに例を挙げながら、説明しています。
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信用創造

 銀行などの金融機関は、いろんな人から「預金」を受け入れ、その預金をもとに、「貸出」を行っています。

 ということは、

  「金融機関は、預金以上に貸し出すことはできない!」

と思うかもしれません。

 しかし、実際は、

  「No!」
  「金融機関は、預金以上に貸出を行うことができる」

ということです。

 このことを「信用創造」と言います。
 信用創造とは、

  「貸出を行うことで、より一層、貸出を行うことができるようになる」

というものです。

信用創造のプロセス

 一見すると、おかしな感じがしますが、なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
 例を挙げて、説明しましょう。

【基本設定】
 ある金融機関は、預金を200集め、現金で所有しているとしましょう。
 そうすると、この金融機関のバランスシートは、次のようになります。

現金 200預金 200

【貸出1】
 この金融機関が、貸出を100行うとしたら、バランスシートは、次のように変わります。
 左側(借方)で貸出100が登場し、その代わり預金が100増えて、300になっています。

現金 200預金 300
貸出 100

 これで見たらわかるように、金融機関が貸出を行えば、預金が増え、金融機関はより一層、貸出ができるようになります。
 これが正しく「信用創造」のプロセスです。

【貸出2】
 ところで、この貸出1について、何か違和感を感じないでしょうか。

 貸出を行いながら、現金は減っていません。実は、この貸出1は、貸出という取引を行っていながら、実は借りたい人に現金を出していないのです。

 ならば、借りたい人にすべて現金を払って、貸出を行ったとすると、バランスシートは次のようになります。
 現金は200から100に減り、その代わり貸出が100になっています。右側(貸方)の預金は200のままで変わっていません。

現金 100預金 200
貸出 100

 つまり、信用創造は起こっていないことになります。

ポイント

 貸出1と貸出2で、同じ貸出を行っているのに、貸出1では預金が増え信用創造が起こり、貸出2では信用創造は起こっていません。
 お気づきかもしれませんが、貸出を行っているが、実際に現金などを支払っているどうかで、状況は変わっているのです。

 つまり、信用創造のポイントは、

  「貸出という取引を行うが、実際に現金などを支払わなければ、信用創造が起こる」

ということです。

 言い方を変えれば、

  「貸し出した形にして、実際に貸し出さなければ、信用創造が起こる」

ということでもあります。

留意点

 架空取引や単なる帳簿上のやりとりにすぎないと思うかもしれません。

 もし、貸出1の場合で、預金300すべてが引き出されるようなことがあったらどうなるのでしょうか。
 もう一度、貸出1のバランスシートを見てみると、現金が200しかなく、払えないように思います。

現金 200預金 300
貸出 100

 しかし、心配することはありません。(現実としてはそう簡単にいくかは別として)貸している人から、現金で返済してもらえば、次のように、現金は300にすることができ、預金の引き出しに対応できます。

現金 300預金 300

実際の取引

 上記のような話をすると、机上の話のように思うでしょう。

 特に、借りた人の立場を考えれば、

  「借りたのにお金を受け取れないなんて、変!」
  「そんな取引をする借入人は、馬鹿・非合理的!」

と思うかもしれません。

 しかし、実際の取引では、よくあることです。

 1つは、借入を行ったが、すぐには現金としては引き出さず、借りた金融機関の預金口座に入れておくというものです。そうすれば、すべてではありませんが、その一部について、金融機関の現金は減ることがありません。

 2つは、急に資金が必要な場合に備えて、借りておくということもあります。借入を行うには手続きなどから、すぐにはできません。とはいえ、企業活動などを行っていると、急に資金が必要なときもあります。このようなときに備えて、借りておくこともあります。長期借入などで借り入れることもありますし、当座貸越ということで、一定枠を借りた形にしておいて、いつでもお金が引き出せるというものもあります。

 3つは、(非合理的といえるかもしれませんが)お付き合いなどもあります。企業からは金融機関との長期的な付き合いを考えたとき、良好な関係を求めます。そうしたときに、金融機関から借りてほしいとお願いされ、借りるということがあります。当然ながら、企業にとっては不必要な資金なので、金融機関の預金などに置いたままにしておきます。そうすると、その貸出すべてについて信用創造が起こることになります。

 他にもあるかもしれませんが、以上のような形で、実際の取引でも、金融機関にとって、貸出のすべてが現金の流出を招くわけではなく、信用創造が発生することになります。

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