概要
私たちが当たり前に使っている貨幣・通貨ですが、なぜ貨幣が必要なのでしょうか。
「そんなことは考えたことがない!」
という声も出てきそうですが、経済学や金融論においては、3つの機能があるとされています。
貨幣の機能・役割
以下では、3つの貨幣の機能・役割について、それぞれ説明していきます。
交換手段
貨幣の最も基本的なものとして、財・サービスを交換しやすくするという「交換手段」があります。
貨幣がなければ、私たちは「物々交換」するしかありません。取引において、それぞれが交換したいものが一致するとは限らず、交換したい人を探すのもたいへんです。
(ちなみ、このような状況を「欲望の二重の一致」が必要と言われたりします)
これでは、日常生活するにも支障が生じるため、それぞれの財・サービスを仲立ち・仲介するものが必要とされます。
なお、この交換手段だけでは、必ずしも「貨幣」である必要はないことに注意してください。
価値尺度手段
次に、財・サービスの価値を測るという「価値尺度手段」があります。
財・サービスによって、その測り方や単位が異なっています。例えば、メロンならば個単位でしょうし、小麦粉ならばkgやgなどの単位をとるでしょう。また、物だけではなく、労働力ならば、時間という単位になったりもします。
それぞれの単位で取引しようとしたら、その比較は非常に大変になり、計算も難しくなります。
なお、価値尺度が一致していない状況というのは、ある意味、現在でも起きていることと言えるかもしれません。
外国の通貨を得ようと思ったとき、あまり日本とは縁がない国では、円ではそのまま両替できない場合があります。そうすると、いったん、ドルなどの他の通貨と交換して、更にもともとほしい通貨を交換するという方法をとるしかありません。
非常に厄介であったり、価値がどのぐらいなのかもわからなくなったりもします。
価値貯蔵手段
最後は、価値が保存されるようなものであるという「価値貯蔵手段」があります。
上記の交換手段・価値尺度手段に基づいて取引に使うことができるものはいろいろありますが、それらが腐ったり、劣化してはどうしようもありません。また、貨幣が保存されるということを前提に考えると、保存しやすいようなものである必要もあります。
歴史的には、塩やコメなどが、貨幣的な役割を果たしてきましたが、劣化したり、保存しにくいので、貨幣としては使いにくい面があります。
まとめ
上記の3つは、貨幣の中でも重要な3つなので、「貨幣の本源的機能」なんて、言われたりもします(この言葉の通り、他にも貨幣の機能はあります)。
いずれにしても、貨幣に対して、歴史上、色々な機能について試行錯誤を行う中、現在のような硬貨や紙幣と言った貨幣になったと言えますし、上記の3つは特に重要な貨幣の機能・役割と言えるでしょう。
参考
家森信善『金融論』
藤原賢哉・家森信善編著『現代金融論講義』