概要
投資家は、多くの証券がある中で、それぞれの収益性を見て、投資を行うと考えられます。
このとき、投資家にとって、個別証券の期待収益率がどのぐらいなのかがポイントになります。
このの個別証券の期待収益率がどうなのかを示すモデルの1つとして、CAPM(資本資産評価モデル)があります。
CAPM
まず、CAPMにおいては、次のような仮定が置かれます。
・投資家は危険回避的で、投資家の効用は期待収益率と分散(リスク)に依存する
・投資家は、現時点において、将来の1時点の証券の期待収益率に基づき、投資する
・投資家は、安全資産と危険資産に投資する
・すべての投資家は、資産の収益率について、同一の期待(確率分布)を予想する
・投資家が保有する証券は、すべて市場で売買される
・投資家は、予算に制限がなく、無制限に借入・貸付が可能である
・市場は完全競争市場であり、個々の投資家はプライス・テイカーである
・投資家の収益には課税されず、売買にあたっての取引費用はゼロである
この仮定の上で、証券$i$の期待収益率$E(r_i)$は、次のようになるとされます。
$E(r_i) = r_f + \beta_i (r_M \; – \; r_f)$
$r_i$:$i$の収益率、$r_f$:安全資産の収益率、$r_M$:市場ポートフォリオの収益率
ただし、
$\beta_i = \dfrac{Cov(r_i \, , \, r_M)}{\sigma^2_{r_M}}$
CAPMの特徴
【シンプル】
上記の通り、CAPMの式自体は、非常にシンプルで、簡単に計算できることが特徴です。
安全資産の収益率は国債などの収益率を、市場ボートフォリオの収益率はTOPIXや日経平均などの収益率を用いれば、あとは$\beta_i$が分かれば、その証券の期待収益率を求めることができます。
$\beta_i$については、(推計方法で値は変わりますが1つのものとして)日経の株式情報などで公表されていたりします。
日本経済新聞「β(ベータ)値高位ランキング」
【リスクプレミアム】
式から分かるように、安全資産の収益率$r_f$に、$\beta_i (r_M \; – \; r_f)$が足された形になっており、個々の証券の収益率は、
個々の証券の収益率 = 安全資産の収益率 + リスクプレミアム
という形になっています。
【超過収益率】
式の第二項におけるカッコ内のものは、市場ポートフォリオの収益率$r_M$から安全資産の収益率$r_f$を引いたもので、危険資産に投資を行うことにより、超過収益を表していると言えます。
【感応度】
$\beta_i$は、超過収益率$r_M \; – \; r_f$の係数となっており、市場ポートフォリオに対する感応度を表すと考えられます。
$\beta_i$が大きいほど、市場全体の動向により大きく反応する証券であり、逆に$\beta_i$がマイナスならば、市場全体の動向とは反対の動きをする証券と言えます。そして、$\beta_i$が$0$に近いほど、市場全体の動向とは無関係な証券ということになります。
また、$\beta_i$が$1$になるときには、
$E(r_i) = r_M$
となり、市場全体の動向を示す市場ポートフォリオの収益率と証券$i$の収益率は、完全に一致することになります。
参考
釜江廣志(編集)『入門証券市場論』
刈屋武昭・佃良彦(編著)『金融・証券数量分析入門』