はじめに
少しでも投資を勉強すると、
「分散投資が大事!」
と言われます。
「卵は一つのカゴに盛るな」という格言もありますが、何となく、「リスクが分散されるから」と思ったりしているのではないでしょうか。
ただ、この「分散投資が大事」という考えは、簡単な数学で説明できます。
そして、数学で考えると、分散するにも「分散にあたってのポイントがある」ということも分かると思います。
数学的説明
収益率
2つの投資先AとBがあるとして、それぞれの収益率を$\pi_A , \pi_B$として、Aに対して$w$、Bに対して$1-w$の割合で投資するとします。
このとき、この投資全体の収益率$\pi$は、
$\pi = w E(\pi_A) + (1-w) E(\pi_B$
となります($E(\cdot)$は期待値で、平均的な収益率を表します)。
リスク
「分散投資が大事」といったとき、重要なのは、むしろリスクです。そして、リスクは分散で表すことになります。
リスクについては、投資先Aのほうがリスクが高いとすると、
$\sigma^2_A \gt \sigma^2_B$
となります。
このとき当然ながら、投資先Aだけではなく、よりリスクの少ないBも投資先に加えることで、当然ながら、リスクは減少することになります。
つまり、リスクの低い投資先を投資に加えることで、リスクは減少し、「分散投資」のメリットが出てきます。
ただ言い換えれば、投資先Bから更に投資先Aを投資に加える場合のように、リスクが高い投資先を投資に加えると、分散投資をしても、逆にリスクは高くなるということです。
相関係数
更に、分散投資について、深堀していきましょう。
投資全体の分散を$\sigma$とすると、分散投資をした場合のリスクは、次のようになります。
$\sigma^2 = E[\pi – E(\pi)]^2$
この式について、それぞれの投資先の分散を$\sigma_A , \sigma_B$として、変形すると、
$\sigma^2 = w^2 \sigma_A^2 + (1-w)^2 \sigma_B^2 + 2w(1-w)\rho \sigma_A \sigma_B \quad \cdots \quad (*)$
が得られます。ここで、$\rho$は、AとBの相関係数になります。
ここで、投資先Aのほうがリスクが高いとすると、$\sigma_A \gt \sigma_B$であり、$0 \lt w \lt 1$とすると、
$\sigma^2_A \gt \sigma^2 = w^2 \sigma_A^2 + (1-w)^2 \sigma_B^2 + 2w(1-w)\rho \sigma_A \sigma_B \gt \sigma^2_B$
となっています。
ところで、投資全体のリスクを$\sigma^2$について考えると、1つのポイントがあることが分かります。
相関係数$\rho$は、1から-1の値をとるので、$-1 \le \rho \le 1$が成立しています。
このことから、$(*)$式の$2w(1-w)\rho \sigma_A \sigma_B$は、マイナスの値をとる可能性があるということです。
言い換えれば、相関係数$\rho$は小さい値であるほど、投資全体のリスクを$\sigma^2$を下げることができます。
ですので、分散投資を行うにあたっては、投資先は相関していない・逆相関である状態のほうが、リスクをより下げることができます。
まとめ
以上をまとめると、分散投資については、次のことが言えます。
・よりリスクが少ない投資先を投資に加えることで、リスクを軽減できる。
(逆に、よりリスクが高い投資先を投資に加えると、かえってリスクが増加する)
・投資先としては、相関していない・逆相関の投資先を組み合わせたほうが、リスクは軽減できる。