APT(裁定価格理論)
個別証券の収益率を$r_i$、共通因子を$b_{ij}$、安全資産の収益率を$r_f$としたとき、$k$個の共通因子について、APT(裁定価格理論)は、次のようになります。
$E(r_i) = r_f + \lambda_1 b_{i1} + \lambda_2 b_{i2} + \cdots + \lambda_k b_{ik}$
そして例えば、共通因子が1個の場合には、
$E(r_i) = r_f + \lambda b_{i} \quad \cdots \quad (1)$
となりますが、この共通因子が1個の場合の導出方法を説明します、
導出方法
ある証券$i$の投資収益率が次のように表せると仮定します。
$r_i = a_i +b_{i} Y \quad \cdots \quad (2)$
ここで2つの証券を$i$と$j$を考え、$\omega$の割合で、ポートフォリオを組むとします。このポートフォリオの収益率を$\pi$とすると、
$\pi = \omega r_i + (1 \; – \; \omega) r_j$
となり、この式について、$(2)$式を代入すると、
$\pi = \omega a_i + (1 \; – \; \omega) a_j + [\omega b_{i} + (1 \; – \; \omega)b_{j}] Y \quad \cdots \quad (3)$
となります。
ここで、システマティックリスクである$Y$をなくすように、ポートフォリオを組むとすれば、その係数が$0$になればいいので、
$\omega b_{i} + (1 \; – \; \omega)b_{j} = 0$
であり、$\omega$について解くと、次を得ることができます。
$\omega^* = \dfrac{ – \; b_j}{b_i \; – \; b_j}$
これを$(3)$式に代入すると、
$\pi = \dfrac{ – \; b_j}{b_i \; – \; b_j} a_i + \left( 1 \; – \; \dfrac{ – \; b_j}{b_i \; – \; b_j} \right) a_j$
であり、式を整理すると、次のようになります。
$\pi = \dfrac{ – \; b_j a_i + b_i a_j}{b_i \; – \; b_j}$
ここで、裁定取引が完全に働くとすると、この収益率は安全資産の収益率$r_f$に等しくなるので、
$r_f = \pi$
であり、
$r_f = \dfrac{ – \; b_j a_i + b_i a_j}{b_i \; – \; b_j} = a_i \; – \; \dfrac{a_i \; – \; a_j}{b_i \; – \; b_j} b_i$
となり、$\lambda = (a_i \; – \; a_j)/(b_i \; – \; b_j)$とすると、
$r_f = a_i \; – \; \lambda b_i \quad \cdots \quad (3)$
となります。
ここで、APTにおいては、システマティックリスクである$Y$は、平均$0$、分散$\sigma^2$と仮定されるので、$(2)$式においては、
$E(r_i) = E(a_i) + b_i E(Y) = a_i$
なので、$(3)$式は、
$E(r_i) = r_f + \lambda b_i$
となり、$(1)$式を得ることができます。
参考
釜江廣志(編集)『入門証券市場論』