離散型の割引率
通常の離散型の割引率について、$t$期の価値を$ V_t$、利率を$ r$、各期の利得を$a$とすると、次のような式になります。
$\displaystyle V_t = \dfrac{a}{(1+r)^t} \quad \cdots \quad (1)$
なお、利得は毎期同じであるとし、$ a$という定数になっています。
ところで、$(1)$式はあくまでも離散型の式であり、連続時間のものではありません。
動学モデルでは連続時間のモデルも多く、いきなり連続型の割引率が使われたりもしています。
そこで、連続型の割引率について、改めて掲載し、その導出方法を説明します。
連続型の割引率
数式の記号については、離散型と同じとすると、連続型の割引率は、次のようになります。
$\displaystyle V_t = a e^{-rt} \quad \cdots \quad (2)$
導出方法
$ (2)$式を見ると、利得$ a$が指数的に割り引かれているという感じで、直観的には理解できるのですが、$ (1)$式から、その導出方法を説明します。
まず、連続時間では微小な単位で複利計算がなされるので、$ t$期を、更に$ n$分割すると、次のようになります。
$ \displaystyle V_t = \dfrac{a}{(1+r/n)^{nt}} \quad \cdots \quad (3)$
この部分は、直観的には理解しにくい感じがあるので、例を加えましょう。
年利$ r$を半年で複利で割り引くことを考えると、利率は半分になり、2回割り引くことになるので、
$ \displaystyle V_t = \dfrac{a}{(1+r/2)^t \times (1+r/2)^t} = \dfrac{a}{(1+r/2)^{2t}}$
となります。同様に、年利$ r$を四半期で複利で割り引くことを考えると、利率は4分の1になり、4回割り引くことになるので、
$ \displaystyle V_t = \dfrac{a}{(1+r/4)^{4t}}$
となります。このように考えると、$ (3)$式のような形になります。
そして、$ (3)$式の分割を極小にすることで、連続型に変形することができます。具体的には、$ (3)$式の$ n$を無限大にすればいい形です。
$ \displaystyle V_t = \lim_{n \rightarrow \infty} \left( \dfrac{a}{(1+r/n)^{nt}} \right) \quad \cdots \quad (4)$
ここで、テクニックとして、
$ \displaystyle x = \dfrac{n}{r}$
を定義します。これを$ (4)$式に代入すると、
$ \displaystyle V_t = \lim_{n \rightarrow \infty} \left( \dfrac{a}{(1+1/x)^{xrt}} \right)$
$ \displaystyle = a \left[ \lim_{n \rightarrow \infty} \left( 1 + \dfrac{1}{x} \right)^x \right]^{-rt} \quad \cdots \quad (5)$
となります。
ここで、指数の定義として、次のようなものがあります(上記でテクニックとしてと書いたのは、次の式を使うためです)。
$ \displaystyle e = \lim_{n \rightarrow \infty} \left( 1 + \dfrac{1}{n} \right)^n$
これを$ (5)$式に使うと、
$ \displaystyle V_t = a e^{-rt}$
となり、$ (2)$式が導出できます。