投資家が資産を運用して、1期後に確率的な収益$C$を得られるとします。
この資産価格を$P$とすると、資産市場に裁定機会がなければ、資産価格と収益の間に、一意に対応させる確率変数を考えることができます。
すなわち、
$P = E(m C)$
となるような$m$を考えることができます。そしてこの$m$を「プライシング・カーネル」(確率的割引ファクター、確率的割引因子)と言います。
ここで、投資収益率は
$r = \dfrac{C}{P}$
となるので、
$1 = E(m r)$
と表すことができます。
更に、共分散の公式を用いると、
$E(r) = \dfrac{1}{m} \; – \; \dfrac{Cov(m \, , \, r)}{E(m)}$
となります(共分散の公式については、「確率変数の公式まとめ」)。
この式を見ると、第1項はすべての資産に共通する要因で、第2項はこの資産特有の要因となっています。
第1項をリスクフリーレート、第2項をリスクプレミアムと考えれば、CAPMやAPTは、このプライシング・カーネルに従っていることが分かります。
参考
早稲田大学大学院ファイナンス研究科・早稲田大学ビジネススクール(編集)『MBA・金融プロフェッショナルのためのファイナンスハンドブック』