公開市場操作
中央銀行の金融政策として、代表的なのが「公開市場操作」です。
公開市場操作では、中央銀行が市場に対して、資金を出したり、資金を吸収したりして、その市場の資金需給をコントロールし、金利の上げ下げを行います。また、市場に対して、資金を増減させるので、当然ながら、ベースマネーに対して、影響をあたることができます。
このとき、公開市場操作は、次の2つがあります。
「買いオペレーション」(買いオペ)
中央銀行が市場から債券を購入し、市場に資金を供給します。この結果、金利低下圧力が市場にかかります。
「売りオペレーション」(売りオペ)
中央銀行が債券を売却し、市場から資金を吸収します。この結果、金利上昇圧力が市場にかかります。
公開市場操作のメリット
公開市場操作が、金融政策の代表とされるのは、他の手段に比べて、優れている点があるからです。
1つは、公開市場操作では、資金供給・資金吸収を行うので、マネタリーベースを直接コントロールできます。
2つは、オペレーションの量をコントロールすることで、いろんな状況に対応でき、伸縮性が富むとされます。
3つは、市場の債券を売買するだけなので、迅速に実施ができるということです。
このように言うと、公開市場操作が万能のように見えるかもしれませんが、これまでの現実の日本経済を考えると、そう単純な話ではないことは明確です。金利を低下させたり、マネタリーベースを増やしたりできても、それ以上のことはできておらず、インフレターゲットがうまくいっていなかったからです。
公開市場操作の対象
上記で、市場や債券という言葉を使いましたが、中央銀行がどのような市場や債券を対象に、公開市場操作を行っているかが問題になります。対象とする市場や債券により、その効果が違うからです。
日本銀行においては、次のような債券を対象にしています(そしてその債券に応じた市場にオペレーションを実施)。
【資金供給オペレーション】(買いオペ)
オペ名 | 対象 |
---|---|
共通担保資金供給オペ | 「適格担保取扱基本要領」に基づき適格と認める金融資産(国債、地方債、政府保証債、財投機関等債、社債、CP等、手形、証書貸付債権など)に対する担保 |
国債買入 | 利付国債 |
国庫短期証券買入オペ | 国庫短期証券 |
CP・社債買入 | CPや社債等 |
ETF・J-REIT買入 | ETFやJ-REIT |
国債買現先オペ | 利付国債や国庫短期証券を、予め定めた期日に売り戻す条件 |
CP等買現先オペ | 「適格担保取扱基本要領」に基づき適格と認めるCP等を、予め定めた期日に売り戻す条件 |
【資金吸収オペレーション】(売りオペ)
オペ名 | 対象 |
---|---|
手形売出オペ | 満期が3か月以内に到来する手形であって、日本銀行が振出人、受取人、支払人を兼ねるもの |
国債売現先オペ | 利付国債や国庫短期証券を予め定めた期日に買い戻す条件 |
国庫短期証券売却オペ | 国庫短期証券 |
日本銀行「オペレーション(公開市場操作)にはどのような種類がありますか?」から整理
このように、日本銀行はいろんな市場・債券に対して、公開市場操作を行っていることが分かると思います。
同時に、どの市場・債券にオペレーションを行うかで、効果が異なることも読み取れるでしょう。
例えば、買いオペで、国債とJ-REITでは、市場が全く異なるので、その効果は違います。
国債は政府の発行した債券なので、国の財政に影響を与えますし、一般的には国債は安全資産と見られますので、全市場に影響を与えるともいえるでしょう。
J-REITは不動産投資に関する市場・投資商品なので、金融市場だけではなく、不動産市場にも影響を与えることができます。
参考
家森信善『金融論』