はじめに
デリバティブ(金融派生商品)とは、その名の通り、融資・債券・株式などの金融取引から派生して生まれた金融商品です。
これらの金融取引には、金利・価格・為替などの金融変数が非常に重要になりますが、デリバティブでは、これらを取引の対象としています。
そしたら、なぜ、このような金融変数を取引とするようになったのでしょうか。
この点を説明するために、デリバティブの役割・機能について、説明します。
デリバティブの機能
デリバティブといった場合、スワップ取引・オプション取引・先物取引・先渡取引などがありますが、正直、非常にややこしいです。
なぜならば、通常の金融取引では、価格などが上がった・下がっただけで考えればいいのですが、デリバティブではそうではなくなるからです。
逆に言えば、上がった・下がっただけで考えていても、不都合・問題が生じるため、デリバティブが生まれたといってもいいでしょう。
これらのことから、デリバティブの役割・機能について、次のようなものがあるとされます。
・リスク・ヘッジ
・価格発見
・市場の活性化
リスク・ヘッジ
デリバティブの最も重要な役割・機能として、リスク・ヘッジが挙げられます。
取引を行う人にとっては、絶えず変動する金融商品の価格などは、リスクと言えます。このようなリスクがあるからこそ、収益が得られるとして、取引を行う人もいますが、特に、金融取引だけに留まらない実需に基づいた取引を行う人にとっては、金融商品の価格変動などが大きければ困ってしまいます。
例えば、貿易などを行っている人にとっては、為替レートが絶えず変動しますが、その変動は小さいほうがいいと言えます。
このようなとき、将来受け取る代金について、その将来におけるレートではなく、先物取引を利用して、現時点で取引における為替レートを確定しておけば、そのリスクを小さくできます。
価格発見
デリバティブという金融商品があることで、1つの金融資産について、現物市場とデリバティブ市場という2つの市場が生まれることになります。
この2つの市場は当然ながら、関連はしているのですが、違う値動きをすることがあり得ます。
現物においては、あくまでも相対取引なので、市場外で取引が行われたり、その取引を行う人たちの交渉力などから影響を受けたりもします。例えば、大手企業と中小企業が個別に交渉して、金融商品を取引すれば、大手企業のほうが有利に働くかもしれません。
しかし、デリバティブ市場においては、そのようなしがらみなどはなく、多くの取引者が参加した市場で価格が形成されます。
そうしたとき、どちらが真の価格を表現しているかと言えば、後者のデリバティブ市場のほうがより正しい価格と言えるでしょう。
このようことから、デリバティブという別の市場を構成することで、その資産の価格を見出すことができると考えられます。
市場の活性化
デリバティブ市場があることで、金融商品に多様性が生まれ、金融市場全体が活性化することが期待できます。
例えば、デリバティブがなく、現物だけで取引が行われていれば、価格下落時に投資を行おうとするものは少なくなります。しかし、デリバティブがあれば、リスク・ヘッジなどを行うことで、取引を行おうとするものが出てきたりもします。
また、1つの金融資産について、現物市場とデリバティブ市場の2つが生じることになるので、その2つの市場の間での価格差などが生じ、その価格差を利用して収益を行うとする裁定取引も活発化したりもします。
このようなことから、デリバティブにより、現物市場の取引も拡大することになります。
最後に
デリバティブには上記のような機能があることから、金融市場にとっては重要な商品・市場となっています。
ただ同時に、レバレッジを利かせることもできたりするので、逆に市場にとっては、かく乱要因・アクセレーターになっている部分もあったりもしますので、注意が必要です。
参考
家森信善『金融論』