国債発行に関する原則
日本において、戦前に軍事費調達などの必要性から、多額の国債が発行され、インフレを招いたということから、戦後、国債発行には制限が加えられることになりました。
そしてその際に、国債発行について、次の2つの原則が設けられています。
・建設国債の原則
・市中消化の原則
建設国債の原則
日本の財政法においては、公債や借入金以外の財源をもって、歳入に充てるとする、非募債主義がとられています。
具体的には、財政法4条で、次のように規定されています。
【財政法4条第1項】
国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
しかし、この4条の但書きにあるように、公共事業費・出資金・貸付金については、例外として、公債の発行や借入金が認められており、これを「建設国債の原則」と言います。
公共事業は多額の費用が必要なことが多く、その建設には長い時間を要します。いったん建設が終われば、その効用は長期間にわたることになるため、例外的に、建設国債の原則として、認めることとなっています。
市中消化の原則
国債発行は原則的に行ってはいけないのですが、例外的に建設国債の発行を財政法では認めています。
そしてその発行にあたり、戦前の日本では日本銀行が直接引き受けたことからインフレを招いたとされ、国債の発行についても制限が加えられています。
具体的には、財政法5条で、国債の発行にあたり、日本銀行の国債の直接引き受けを禁止しています。
【財政法5条】
すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。
ただ、この5条の但書きにあるように、特別な場合には、一部認められており、「日銀乗換」はそれに該当するとされます。
日銀乗換とは、すでに発行されている国債について、その借り換えを行う借換債の引き受けを日本銀行が行うというものです。あくまでも借り換えなので、国債の増大を招かないという趣旨です。
なお、財務省証券・一時借入金、特別会計の一時借入金・短期証券については、あくまでも短期の資金繰りの問題なので、この原則には当てはまらないとされています。
現実
上記のような原則のもと、国債発行は制限されています。
しかし現実には、この国債発行の原則外で、国債発行が行われています。
建設国債の原則の例外として、歳入が不足することが見込まれる場合には、建設国債以外の国債の発行が行われています。特例法に基づいて行われており、「特例国債」(赤字国債)と呼ばれ、現在の日本では毎年のように発行されています。
市中消化の原則について守られていますが、いったん政府は市中に国債を発行し、それを日本銀行が買い取るという形で、日本銀行が国債を引き受けています。結果、直接引き受けではありませんが、日本銀行は多くの国債を所有することになっています。