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基礎的財政収支の均衡化をしても、借金は増えるのでは?

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投稿財政学中級
基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を均衡化しても、借金は増えるように思いますが、なぜ、基礎的財政収支の均衡化が重要かについて説明します。
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概要

 基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の黒字化や均衡化が重要と言われたりもします。
 黒字化はいいとして、均衡化しても、

  「借金は増えるのでは」

という気がします。そして、

  「借金が増え続けるのはいいことなのか」

という疑問を持つことがあると思います。

 それでは、なぜ基礎的財政収支の均衡化が言われるのでしょうか。それについて、説明します。

基礎的財政収支(プライマリー・バランス)

 まずは、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)について、改めて説明します。
 基礎的財政収支とは、歳入から利払い費を除いた歳出の差額です。

  基礎的財政収支 = 歳入 - 利払い費を除いた歳出

 そして、基礎的財政収支の均衡化とは、この基礎的財政収支がゼロになる状態で、利払い費を除けば、国として入ってきた歳入の分だけ、歳出として政策に使うことを意味します。

  基礎的財政収支の均衡化 = 0

  歳入 = 利払い費を除いた歳出

 ただ、収入に入ってきた分だけ支出を行うことになりますが、このままでは、利払い分が支払えないことになってしまいます。

理論的な考え

 ここで、$t$期の基礎的財政収支を$P_t$、歳入を$T_t$、利払いを除いた歳出を$E_t$とすると、上記の式は、次のようになります。

  $P_t = T_t - E_t$

 ここで、利率を$r$、$t$期の国債残高を$D_t$とすると

  $D_t = (1 + r) D_{t-1} + P_t$

となります。この式からわかるように、基礎的財政収支が均衡化してゼロであっても($P_t=0$)、国債は増えていくことが読み取れます。
 数式で表さなくても分かると思いますが、念のため、説明すると、$P_t = 0$として、上記の式は

  $D_t - D_{t-1} = r D_{t-1} > 0 \cdots (1)$

となるので、$D_t>D_{t-1}$となり、$t-1$期の国債残高よりも$t$期の国債残高のほうが大きく、国債残高は増えることになります。

 ところで、$(1)$式は、$t$期のものですが、$t-1$期から$0$期までを考えると、次の式が成り立ちます。

  $D_{t-1} = (1 + r) D_{t-2}$

    $\vdots$

  $D_1 = (1 + r) D_0$

 これを使うと、$(1)$式は、次のようになります。

  $D_t = (1+r)^t D_0$

 更に、式変形すると、

  $\dfrac{D_t}{1+r} = D_0$

となります。これは、現時点である$0$期の国債残高と$t$期の国債残高の現在割引価値が等しいことを意味します。
(割引率の考え方については、「経済学で出てくる「割引」とは? 分かりやすく解説します」を参考にしてください)

 言い換えれば、現在割引価値という基準を用いれば、国債残高は増えないことになっています。
  
 つまり、基礎的財政収支を均衡化させれば、国債残高の現在割引価値を現時点の水準から高めないということになり、基礎的財政収支の均衡化が重要というわけです。

ポイント

 若干トリックのようにも感じるので、上記の話を踏まえ、ポイントを整理しましょう。

 国として、国の借金や国債残高について、次の4つの方針が考えられます。

  ① 借金を減らす

  ② 借金を増やさない

  ③ (現在割引価値という基準で)借金を増やさない

  ④ 借金を増やす

 このとき、④の借金を増やすというのはよくないとして、現実問題として、基礎的財政収支も赤字な状態では、①や②は厳しい状態にあります。そこでまずは、

  「歳入として入ってくるお金の分だけに、利払い費を除いた歳出を抑えましょう」

そして、
  「③(現在割引価値という基準で)借金を増やさない」というのをまずは目指しましょう

ということです。

 ですので、政府としては、基礎的財政収支の黒字化や均衡化を目指し、最低でも均衡化、できたら黒字化をやりたいということを表明していることになります。

参考

  小塩隆士『コア・テキスト財政学

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