はじめに
次のような重回帰モデルを考えます。
$y_i = \alpha + \beta_1 x_{i1} + \cdots + \beta_p x_{ip} + u_i \quad (i = 1 \, , \, 2 \, , \, \cdots \, , \, n)$
$E(u_i) = 0$、$E(u_i^2) = \sigma^2$、$E(u_i u_j) = 0 \quad (i \neq j)$
式から分かるように、スタンダードなモデルとなっており、そのままOLSを行えばいい形です。
ただこのとき、例えば、次のような係数間で制約が課せられているるとします。
例:$\beta_1 + \beta_2 = 0$
例:$\beta_3 = \beta_4 = 0$
係数間での制約を線形制約と言いますが、このようなときには、これらの制約が正しいのかどうかを検定する必要があります。
線形制約の検定
発想としては簡単で、線形制約がある場合とない場合を比較して、その違いがあるどうかを見ることになります。
統計学的には、次のような仮説を検定します。
$H_0$:線形制約あり
$H_1$:線形制約なし(無制約)
具体的には、次のような手順をとります。
①無制約での推計
無制約でモデルの推定を行い、残差二乗和($RSS^u$)を計算します。
②制約つきでの推計
制約付きでモデルの推定を行い、残差二乗和($RSS^r$)を計算します。
③F検定の実施
検定統計量$F$
$F = \dfrac{(RSS^r \; – \; RSS^u) / q}{RSS^u / (n \; – \; p \; – \; 1)}$
を計算します。
ここで、$n$はデータ数、$p$はモデルの係数の数、$q$は、
$q = $(無制約モデルの回帰係数の数) $-$ (制約付きモデルの回帰係数の数)
です。
そして、F分布からこの$F$が棄却できるどうかをみることで、線形制約が成立しているどうかを調べることができます。
参考
羽森茂之『ベーシック計量経済学』