はじめに
2つの変数$x_1 , x_2$について、目的関数を$u(x_1 , x_2)$、制約条件を$E = f(x_1 , x_2)$として、最適化問題を考えるとします。
$\displaystyle \max_{x_1 ,x_2} \; u(x_1 , x_2)$
$s.t. \; E = f(x_1 , x_2)$
そしてこの問題を解く方法として、定番なのがラグランジュ未定乗数法で、次のような定式化を行うことになります。
$L = u(x_1 , x_2) \; – \; \lambda (f(x_1 , x_2) \; – \; E) \cdots (1)$
このときに思うことは、
「ラグランジュ乗数$\lambda$って、何だ?」
「ラグランジュ乗数$\lambda$は最終的に消去しなければならないので、面倒!」
といったところではないでしょうか。
また、本を読むと、ラグランジュ乗数は、「シャドープライス」「潜在価格」などと呼ばれており、一層、分からくなったりもするでしょう。
そこで、ラグランジュ乗数の意味について、説明します。
ラグランジュ乗数の意味
意味
ラグランジュ乗数の意味を一言でいえば、
「制約式のパラメーターが変化したとき、目的関数に与える影響」
を示しています。
文章ではかえって分かりにくいと思いますので、$(1)$式から、数式で表すと、
$\displaystyle \lambda = \dfrac{\partial u(x_1 , x_2)}{\partial E}$
を示します。
例えば、基本的な消費者行動のモデルで考えれば、所得の変化が効用に与える影響といえるものでしょう。
証明
上記の最適化問題についての解を$\textbf{x}^* = (x_1^* , x_2^*)$とすると、$\textbf{x}^*$の値は、$E$の値で決まることになります。このことから、$x_1^* = x_1^*(E)$、$x_2^* = x_2^*(E)$と表すことができ、目的関数$u(x_1 , x_2)$と制約条件$f(x_1 , x_2) \; – \; E$に代入すると、次のような関数$U, F$を考えることができます。
$U(E) = u(x_1^*(E) , x_2^*(E))$
$F(E) = f(x_1^*(E) , x_2^*(E)) \; – \; E$
この2式に関し、$E$について微分すると、
$\displaystyle U'(E^*) = \dfrac{\partial u(\textbf{x}^*)}{\partial x_1} \dfrac{d x_1}{d E} E^* + \dfrac{\partial u(\textbf{x}^*)}{\partial x_2} \dfrac{d x_2}{d E} E^* \cdots (2)$
$\displaystyle F'(E^*) = \dfrac{\partial f(\textbf{x}^*)}{\partial x_1} \dfrac{d x_1}{d E} E^* + \dfrac{\partial f(\textbf{x}^*)}{\partial x_2} \dfrac{d x_2}{d E} E^* \; – \; 1 \cdots (3)$
となります。
ここで、$\textbf{x}^*$が$(1)$式の解ならば、1階条件として$\nabla u(\textbf{x}^*) = \lambda^* \nabla f(\textbf{x}^*)$が成り立つので、
$\displaystyle \dfrac{\partial u(\textbf{x}^*)}{\partial x_1} = \lambda^* \dfrac{\partial f(\textbf{x}^*)}{\partial x_1} , \dfrac{\partial u(\textbf{x}^*)}{\partial x_2} = \lambda^* \dfrac{\partial f(\textbf{x}^*)}{\partial x_2}$
という式が得られるので、$(2)$式に代入すると、$U'(E^*)$は、次のようになります。
$\displaystyle U'(E^*) = \lambda^* \left[ \dfrac{\partial f(\textbf{x}^*)}{\partial x_1} \dfrac{d x_1}{d E} E^* + \dfrac{\partial f(\textbf{x}^*)}{\partial x_2} \dfrac{d x_2}{d E} E^* \right] \cdots (4)$
他方、$F(E)$については、$F'(E)=0$なので、$(3)$式は、
$\displaystyle \dfrac{\partial f(\textbf{x}^*)}{\partial x_1} \dfrac{d x_1}{d E} E^* + \dfrac{\partial f(\textbf{x}^*)}{\partial x_2} \dfrac{d x_2}{d E} E^* = 1$
となり、これを$(4)$式に代入すると、
$\displaystyle U'(E^*) = \lambda^* \left[ \dfrac{\partial f(\textbf{x}^*)}{\partial x_1} \dfrac{d x_1}{d E} E^* + \dfrac{\partial f(\textbf{x}^*)}{\partial x_2} \dfrac{d x_2}{d E} E^* \right] = \lambda^*$
を得ることができます。
これについて、分かりやすく表記を変えると、次のようになります。
$\displaystyle U'(E^*) = \dfrac{\partial U(x_1^*(E^*) , x_2^*(E^*))}{\partial E^*} = \dfrac{\partial u(x_1^* , x_2^*)}{\partial E^*} = \lambda^*$
参考
入谷純・加茂知幸『経済数学』
ピーター・バーク、クヌート・シュドセーテル『エコノミスト数学マニュアル』