求め方の流れ
具体的な手順を説明する前に、大きな流れを説明します。
ある正則行列$\textbf{A}$があるとき
①行列$\textbf{A}$の余因子$A_ij$を求める
②その余因子をもとに、余因子行列$\tilde{\textbf{A}}$
③その余因子行列を使って、逆行列$\textbf{A}^{-1}$を得る
という3つのステップを踏みます(行列式$|\textbf{A}|$の計算も入れれば、4つのステップ)。
手順
次のような$n \times n$の正則行列$\textbf{A}$があるとします。
$\textbf{A} = \begin{bmatrix}
a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n}\\
a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n}\\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots\\
a_{n1} & a_{n2} & \cdots & a_{nn}\\
\end{bmatrix}$
この行列について、余因子を
$A_{ij} = (- \; 1)^{i+j} \begin{vmatrix}
a_{11} & \cdots & a_{1(j-1)} & a_{1(j+1)} & \cdots & a_{1n}\\
\vdots & \ddots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots\\
a_{(i-1)1} & \cdots & a_{(i-1)(j-1)} & a_{(i-1)(j+1)} & \cdots & a_{(i-1)n}\\
a_{(i+1)1} & \cdots & a_{(i+1)(j-1)} & a_{(i+1)(j+1)} & \cdots & a_{(i+1)n}\\
\vdots & \ddots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots\\
a_{n1} & \cdots & a_{n(j-1)} & a_{n(j+1)} & \cdots & a_{nn}
\end{vmatrix}$
とします。行列式について、分かりにくいですが、$i$行と$j$列のものを取り除いたものです。
このとき、余因子行列を$\tilde{\textbf{A}}$とすると
$\tilde{\textbf{A}} = \begin{bmatrix}
A_{11} & A_{21} & \cdots & A_{n1}\\
A_{12} & A_{22} & \cdots & A_{n2}\\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots\\
A_{1n} & A_{2n} & \cdots & A_{nn}\\
\end{bmatrix}$
となります(なお、行列$\textbf{A}$から見ると、$i$と$j$が転置していることに注意してください)。
そしてこの余因子行列$\tilde{\textbf{A}}$を使うと、行列$\textbf{A}$の逆行列$\textbf{A}^{-1}$は、
$\textbf{A}^{-1} = \dfrac{1}{|\textbf{A}|} \tilde{\textbf{A}}$
とされます。
2×2行列の場合
次のような2×2行列があるとします。
$\textbf{A} = \begin{bmatrix}
a & b\\
c & d\\
\end{bmatrix}$
逆行列の公式自体は、高校数学でも出てきますが、上記の手順で、この逆行列を求めてみましょう。
まずは、余因子を求めると、次のようになります。
$A_{11} = d \quad , \quad A_{12} = \; – \;c \quad , \quad A_{21} = \; – \;b \quad , \quad A_{22} = a$
これにより、余因子行列を得ることができます。
$\tilde{\textbf{A}} = \begin{bmatrix}
d & – \; b\\
– \; c & a\\
\end{bmatrix}$
この行列の行列式$|\textbf{A}|$は、
$|\textbf{A}| = bc \; – \; ad$
なので、
$\textbf{A}^{-1} = \dfrac{1}{|\textbf{A}|} \tilde{\textbf{A}} = \dfrac{1}{bc \; – \; ad} \begin{bmatrix}
d & – \; b\\
– \; c & a\\
\end{bmatrix}$
という逆行列の式を得ることができます。