はじめに
いくつかの変数があるとき、それらが因果関係を有しているかどうかは、モデルを検討するうえで重要です。
また2つの変数で考えると、この2つは因果関係があるかどうかは勿論、双方で影響を与え合っているのか、一方だけ影響を与えているかなどを知ることも大事になります。
このとき、この因果関係について検証するのが、「因果関係の検定」(Granger検定)です。
基本的な発想は、ある変数を予測するにあたり、別の変数を含めても、予測が改善するかどうかで、因果関係があるかどうかを検証します。別の変数を含めたとき、予測が改善すれば、因果関係があり、予測が改善しないときには、因果関係はないと考えます。
因果関係の検定(Granger検定)
基本的考え方
次のような2変量のVAR(p)モデルを考えます。
$\displaystyle x_t = a + \sum_{i=1}^p b_i x_{t-i} + \sum_{i=1}^p c_i y_{t-i} + u_{xt} \quad \cdots \quad (1)$
$\displaystyle y_t = d + \sum_{i=1}^p e_i x_{t-i} + \sum_{i=1}^p f_i y_{t-i} + u_{yt} \quad \cdots \quad (2)$
このとき、$y_t$から$x_t$への因果関係の有無を検討するときには、帰無仮説と対立仮説を次のようにします。
$H_0 : c_1 = c_2 = \cdots = c_p = 0$
$H_1 : c_1 \neq 0$ または $c_2 \neq 0$ または $\cdots$ または $c_p \neq 0$
すなわち、$x_t$についての$(1)$式で、$y_t$の係数である$c_i$がすべて0であれば、帰無仮説を棄却できず、因果関係はないこととなります。逆に、帰無仮説を棄却できれば、$y_t$から$x_t$への因果関係があるとされます。
なお逆に、$x_t$から$y_t$への因果関係を見たいときには、同様な考えのもとに$(2)$を使うことになります。
具体的方法
基本的には、制約なし・制約ありの場合のF検定や$\chi^2$検定を行うことになりますが、具体的には次のような方法です。
まず、$(1)$式について、次の制約なし・制約ありの2つのモデルを考えます(制約なしのモデルは$(1)$式のそのままのものです)
制約なし:$\displaystyle x_t = a + \sum_{i=1}^p b_i x_{t-i} + \sum_{i=1}^p c_i y_{t-i} + u_{xt}$
制約あり:$\displaystyle x_t = a + \sum_{i=1}^p b_i x_{t-i} + u_{xt}$
制約ありは、式に$y_t$が入っていない形です。
この2式をそれぞれOLSで推計すると、制約なしの残差二乗和$RSS^u$と制約ありの残差二乗和$RSS^r$を得ることができます。
そうしたら、データ数$T$のもとで、次のような検定統計量$F$は、自由度$(p \, , \, T \; – \; 2p \; – \; 1)$のF分布に従うので、これを検定すればいいことになります。
$\displaystyle F = \dfrac{(RSS^r \; – \; RSS^u)/p}{RSS^u / (T \; – \; 2p \; – \; 1)}$
なお、制約なし・制約ありの場合と同様に、$\chi^2$検定でも検定することができます。
参考
羽森茂之『ベーシック計量経済学』