経済学において、$Y=AK$を時間微分すると、
$ \dfrac{\dot{Y}}{Y} = \dfrac{\dot{A}}{A} + \dfrac{\dot{K}}{K}$
と変形できるといった話が出てきます。
分かるような分からないような感じですが、ポイントは合成関数です。
ただ、時間微分という形で、「時間」という概念が入っているから分かりにくい感じもあるので、それを抜きにして、考えてみましょう。
【一般的な微分計算(時間という概念なし)】
例として、それぞれれが$m$の関数である次のような式を考えます。
$Z(m) = X(m) Y(m)$
これを対数化すると、次のようになります。
$\ln Z(m) = \ln X(m) + \ln Y(m) \quad \cdots \quad (1)$
ここで、合成関数のチェーン・ルールとして、次のようなものがあります。
$ \dfrac{d \, h(f(x))}{d \, x} \, = \, h'(f(x)) \, f'(x)$
$\ln X(m)$について、この式を用いるため、
$h(m) = \ln X(m) \, , \, f(m) = X(m)$
として考えると、対数の微分式$d (\ln a) = 1/a$を用いて
$\dfrac{d \ln X(m)}{d m} = \dfrac{d \ln X(m)}{d X(m)} \cdot \dfrac{d X(m)}{d m} = \dfrac{1}{X(m)} \cdot \dfrac{d X(m)}{d m} = \dfrac{d X(m) / d m}{X(m)}$
を得ることができます。
同様に、$Y(m) \, , \, Z(m)$についても考えることができるので、$(1)$式は、
$\dfrac{d Z(m) / d m}{Z(m)} = \dfrac{d X(m) / d m}{X(m)} + \dfrac{d Y(m) / d m}{Y(m)} \quad \cdots \quad (2)$
となります。
【時間微分】
以上は、時間という概念を抜きして、純粋に数学的な問題として考えてきました。
ところで、$(2)$式の$m$を、時間$t$としたとき、
$\dfrac{d Z(t) / d t}{Z(t)} = \dfrac{d X(t) / d t}{X(t)} + \dfrac{d Y(t) / d t}{Y(t)}$
となり、$\dot{Z}(t) = d Z(t) / d t$、$\dot{X}(t) = d X(t) / d t$、$\dot{Y}(t) = d Y(t) / d t$とすると、
$\dfrac{\dot{Z}(t)}{Z(t)} = \dfrac{\dot{X}(t)}{X(t)} + \dfrac{\dot{Y}(t)}{Y(t)}$
と表され、まさしく時間微分をしたときの式を得ることができます。
このように、時間微分というと特別なことをしているようにも感じますが、単純な合成関数を用いた微分計算を行っているわけです。