はじめに
計量経済学の回帰分析において、説明変数と誤差項に相関があるときに、そのまま古典的な回帰分析を行うと、不偏性や一致性を持たないことになります。
このような問題について、別のデータをもってきて、二段階で推計を行い、この問題を回避するというものがあり、これが「二段階最小二乗法」(TSLS)です。
この二段階最小二乗法について、説明します。
二段階最小二乗法
次のような単回帰モデルを考えます。
$y_i = \beta_0 + \beta_1 x_i + u_i \quad \cdots \quad (1)$
ただし、
$E(u_i)=0 \; , \; E(u_i^2)=\sigma^2 \; , \; E(u_i u_j) =0 \;(i \neq j)$
で誤差項は単回帰の仮定に従っていますが、
$E(x_i u_i) \neq 0$
と、説明変数と誤差項が相関しているとします。
このときに、操作変数を用いて、説明変数において、例えば、次のような関係を仮定します(もちろん、他のモデルで仮定をすることもあります)。
$x_i = \alpha_0 + \alpha_1 z_{1i} + \alpha_2 z_{2i} + v_i \quad \cdots \quad (2)$
この$(2)$式について、OLSで推定し、予測値を求めます。
$\hat{x}_i = \hat{\alpha}_0 + \hat{\alpha}_1 z_{1i} + \hat{\alpha}_2 z_{2i}$
そして、この予測値をもとに、$(1)$式を
$y_i = \beta_0 + \beta_1 \hat{x}_i + e_i \quad \cdots \quad (3)$
のように推定して、$\hat{\beta}_0 \, , \, \hat{\beta}_1$を求めることになります。
ちなみに、ここでの誤差項$e_i$は、
$e_i = u_i + (x_i \; – \; \hat{x}_i)\beta_1$
となっています。
そして、$(3)$式による推定量は、不偏推定量ではありませんが、一致推定量になります。
参考
鹿野繁樹『新しい計量経済学』
羽森茂之『ベーシック計量経済学』