住宅市場においては、新築住宅市場と中古住宅市場がありますが、中古住宅市場において、低所得者層への住宅供給にかかる仕組みとして、フィルタリングというものがあります。
住宅は当然ながら、時間が経過すると、老朽化していきます。
このとき、住宅の所有者にとっては、2つの選択肢があります。
・リフォームなどの更新投資を行い、住宅の質を維持・向上させる
・投資などをせずに、住宅の質が落ちるままにする
前者においては、住宅の所有者は住み続けることを前提としているのですが、後者では、より質の高い住宅に転居するケースが多くあります。
そうすると、質の落ちた住宅が空き家となり、住宅供給が行われるのですが、質が落ちているので、価格も下落しています。
この結果、この住宅は、以前の所有者よりも低所得者に供給されることになります。
このように、住宅がフィルターとなって、居住者の階層の交代が行われることがあります。
この現象は、戦後のアメリカの古い大都市の集合住宅に見られたとされ、そこに居住していた中産階級が郊外の広い住宅に転居した結果、その集合住宅に低所得者が居住し、スラム化が進んだとされています。
参考
山田浩之・徳岡一幸編『地域経済学入門』