はじめに
ある地域の経済に関し、現在の状況を踏まえ、今後その経済はどうなるでしょうか。
1つの考えは、現在の状況が促進されていくというものでしょう。
例えば、ある地域の経済成長が高いとき、生産性の上昇をもたらし、賃金コストを抑え、より一層、高い成長が実現されると考えられます。
このように、ある経済変化が同じ方向で、累進的に強化・促進されるような累進的因果関係をベースにしたモデルとして、「累積的因果関係モデル」があります。
累積的因果関係モデル
ある経済において、$t$期における生産物の成長率を$y_t$とし、生産性の上昇率を$r$とします。
生産性の上昇率は、集積や規模の経済から、生産物の成長率から正の影響を受けるとして、
$r = a +by \quad (b>0)$
と表されるとします。ここで、$b$は「バードーン係数」と呼ばれます。
次に、賃金上昇率$w$は、生産性の上昇率とは負の関係にあり、生産性の上昇率が高いほど、賃金上昇率は抑えられるとし、
$w = c \; – \; dr \quad (d>0)$
と表されるとします。
最後に、賃金上昇率が低いほど、生産物の成長率は高まると考え、次のようになるとします。
$y_{t+1} = e \; – \; fw \quad (f>0)$
以上の3本の式について、$w$と$r$をキャンセルしまとめると、
$y_{t+1} = e + f(ad \; – \; c) + bdf y_t$
ここで、
$g = bdf (>0)$
$h = e + f(ad \; – \; c)$
と定義すると、
$y_{t+1} = g y_t + h \quad \cdots \quad (1)$
となります。このことから、$g$が高いほど、この経済は高成長率をもたらすと考えられます。
均衡成長率
$(1)$式において、$y_{t+1} = y_t$とすると、均衡成長率$y_*$を求めることができます。
$y_* = \dfrac{h}{1 \; – \; g}$
ただし、$g \, , \, h$から、この経済がどのように成長していくかが分かれます。
例えば、$g<1 \, , \, h>0$のときには、均衡成長率$y_*$は正の値をとるので、成長し続けることになります。
しかし、$g>1 \, , \, h<0$のときには、当初の成長率が均衡成長率よりも高いときには、成長率はどんどんと高まり、当初の成長率が均衡成長率よりも低いときには、成長率はどんどんと低下し、均衡成長率に達することはありません。
また、$g>1 \, , \, h>0$や$g<1 \, , \, h<0$のときには、均衡成長率$y_*$はマイナスになるので、この経済は衰退していくことになります。
$g>1$ | $g<1$ | |
---|---|---|
$h>0$ | 衰退 | 均衡 |
$h<0$ | 不均衡 | 衰退 |
参考
山田浩之・徳岡一幸編『地域経済学入門』