乗数理論
乗数理論とは、政府支出などの支出が増加すると、それ以上に所得が増えるというものです。
例えば、所得を$ Y$、消費を$ C$、政府支出を$ G$とすると、
$ Y = C + G$
という式が成立します。そして、所得のうちどれだけ消費に回すかという消費性向を$ c$とすると
$ C = cY$
という式になります。
この2つの式を使い、$ C$を消すと、
$ Y = \dfrac{1}{1-c}G$
という式が得られます。そして、この$ 1/(1-c)$が乗数効果になります。
消費性向が$c = 0.5$として、政府支出$ G$が$ 2$が増えたとすると、
$ \delta Y = \dfrac{1}{1-0.5} \times 2 = 4$
となり、政府支出$ G$が$ 2$増加した以上に、所得$ Y$が$ 4$増加していることになります。
マーケティングに読み替えた場合
モデル
乗数理論の考えをひとまず置いておいて、マーケティングを考えるとしましょう。
ある飲食店の客数$ N$は、新規顧客$ X$と固定客$ F$に分けられるとします。
そうすると、この店の客数は、次のような式になります。
$ N = X + F$
このとき、新規顧客は人気店には多く集まり、不人気店にはあまり来ないという行動をとるとします。そこで、この店の客数に一定の割合$ \alpha$で新規顧客が来るとすると、
$ X = \alpha N$
という式が成立します。
これを上記の式に代入すると、
$ N = \dfrac{1}{1-\alpha}F$
となります。すなわち、固定客が増えると、その固定客の増加以上に、$ 1/(1-\alpha)$という倍率で、この店の客数が増えることになります。
考え方
「新規顧客は人気店には多く集まり、不人気店にはあまり来ないという行動をとる」という仮定が一つのポイントで、必ず新規顧客がこのような行動をとるとは限りませんが、モデルとしては、特に変な形ではないと思います。
そして、
顧客数$ N$ ⇒ 所得$ Y$
新規顧客$ X$ ⇒ 消費$ C$
固定客$ F$ ⇒ 政府支出$ G$
新規顧客率$ \alpha$ ⇒ 消費性向$ c$
とすれば、最初のマクロ経済学の乗数理論のものになります。
実際は、乗数理論から、このマーケティングのモデルを説明しており、経済学の考えをマーケティングなどに使った形です。
まとめ
経済学はもともと物理学をもとにしている部分があり、数学的に抽象化もされています。
そのため、経済学の考えを他にも利用できたりもします。
これを表すために、例を挙げてみました。