一位価格オークション
一位価格オークションとは、複数人が入札額を出して、その価格が最も大きい人が落札できるというオークションです。
$n$人のオークション参加者がいるとして、それぞれの買い手の真の評価額を$v_i$とします。評価額$v_i$は独立な確率変数で、$v_ \in [0 \, , \, 1]$に一様に分布しているとします。
買い手$i(i =1 ,\, , \, 2 \, , \, \cdots \, , \, n)$の入札額を$x_i$すると、買い手$i$の利得$\pi_i$は、
$\displaystyle \pi_i = v_i \; – \; x_i \quad (x_i > \max_{i \neq j} x_j) \quad \cdots (1)$
となります。なお、$x_i > \max_{i \neq j} x_j$でなければ、買い手$i$は落札できないので、利得は$0$となります。
ここで、評価額と入札額において、次のような線形の対応関係があるとします。
$x_i = k v_i \quad \cdots (2)$
$k = x_i / v_i$なので、$k$は評価額に対する入札額の比を表していると考えられます。
以上を踏まえ、次に入札をするときを考えましょう。
買い手$i$が落札するには、
$x_i > x_j \quad (i \neq k)$
である必要があり、$(2)$式から、
$v_j < \dfrac{x_i}{k} \quad (i \neq k)$
となります。
$v_j$は一様分布に従う確率変数なので、$(1)$式に確率を掛け合わると期待利得を得ることができるので、$買い手$i$の期待利得$\pi_i^e$は、
$\displaystyle \pi_i^e = \prod_{i \neq j}^n \dfrac{x_i}{k} (v_i \; – \; x_i)$
であり、次のように式を整理できます。
$\displaystyle \pi_i^e = \left( \dfrac{x_i}{k} \right)^{n-1} (v_i \; – \; x_i)$
買い手$i$は、この期待利得を最大化するように、入札額を決めるため、
$\displaystyle \dfrac{\partial \pi_i^e}{\partial x_i} = (n \; – \; 1) \dfrac{1}{k} (v_i \; – \; x_i) \left( \dfrac{x_i}{k} \right)^{n-2} \; – \; \left( \dfrac{x_i}{k} \right)^{n-1} = 0$
であり、$x_i / k$について整理すると、
$(n \; – \; 1)(v_i \; – \; x_i) = x_i$
となり、$x_i$について解くと、
$x_i = \dfrac{n \; -\; 1}{n}v_i \quad \cdots (3)$
となります。
この式から、買い手$i$は、評価額に$(n\;-\;1)/n$を掛けた値が入札額となることが分かります。
$(3)$式の意味
$(3)$式の意味合いを考えてみましょう。
まずは、
$\dfrac{n \; -\; 1}{n} < 1$
であることは明らかなので、買い手$i$は、真の評価額よりも低い額を入札額とすることが分かります。そして、$(1)$式より、利得はプラスになります。
2つ目は、買い手が1人しかいないときには、$n=0$であり、$(3)$式より
$x_1 = 0 \times v_1 = 0$
となり、買い手の評価額を問わず、$0$円で入札することになります。
3つ目は、$(3)$式は、
$x_i = v_i \; – \; \dfrac{1}{n} v_i$
と書き表されるので、$n \rightarrow \infty$のときには、次のように評価額と入札額は一致することになります。
$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} x_i = \lim_{n \rightarrow \infty} \left( v_i + \dfrac{1}{n} v_i \right) = v_i$
参考
土橋俊寛『ゲーム理論』
奥野正寛(編著)『ミクロ経済学』
岡田章・加茂知幸・三上和彦・宮川敏治『ゲーム理論ワークブック』