概要
日本においては、小選挙区制と比例代表制が採られていますが、比例代表制においては、各政党にどのように議席を割り振るかという問題があります。
このとき、議会の議席割り当てについて、いくつかの方式がありますが、その1つである「ハミルトン方式」について、説明します。
ハミルトン方式とは、地域ごとの人口の割合を、議席数に割り当てるというものです。
(ここでは、人口の割合で話しますが、人口を政党ごとの得票数などと考えれば、同じことが成立するので、ご注意ください)
手順
①人口割合を求める
総人口を$ P$、$ i$地域の人口を$ p_i$とすると、次式を計算し、人口割合($ r_i$)を求めます。
$ r_i = \dfrac{p_i}{P}$
②クォータを算出する
クォータ($ q_i$)とは、総人口に対する地域の人口割合$ r_i$を総議席数(S)に掛けたものです。
$ q_i = r_i \times S$
③割り当て議席数を決める
クォータを算出した場合、少数部分が生じるため、整数部分を足し合わせ、余った部分を、各クォーターの中で少数部分が大きいところから、割り当てていきます。
数値例
手順としては上記の通りなのですが、それだけでは分かりにくいので、数値例で説明します。
なお、ハミルトン方式で、3つの地域について、議席数21を割り当てるの例示です。
人口 | クォータ | 割当議席数 | |
---|---|---|---|
地域A | 7,270 | 14.24 | 14 |
地域B | 1,230 | 2.41 | 3 |
地域C | 2,220 | 4.35 | 4 |
計 | 10,720 | 21.00 | 21 |
アラバマ・パラドックス
ハミルトン方式は簡便で、直観的にも分かりやすい方式ですが、「アラバマ・パラドックス」という問題が生じることがあります。
例えば、上記の数値例で、人口は変わらず、議席数が21議席から1議席増え、22議席になったとしましょう。
人口 | クォータ | 割当議席数 | |
---|---|---|---|
地域A | 7,270 | 14.92 | 15 |
地域B | 1,230 | 2.52 | 2 |
地域C | 2,220 | 4.56 | 5 |
計 | 10,720 | 22.00 | 22 |
この数値例で、注目すべきは、地域Bの割当議席数です。総議席数が21議席のときは地域Bの割当議席数は3議席であったのに、総議席数が22議席に増えたにもかかわらず、地域Bの割当議席数は2議席と、1議席減っている事態となっています。
これが「アラバマ・パラドックス」です。
参考
川越敏司『はじめてのゲーム理論』