回帰分析において、次のようなモデルを推計しようとしたとき、モデルは非線形なのでそのまま回帰分析を適用できません。
$y = a x^b$
このような場合に、1次式に変換できれば、回帰分析を行うことができます。
そこで、いくつかの関数を例に、線形化の例を紹介していきたいと思います。
そして、最後に線形化のポイントを説明します。
【$y = a x^b$の場合】
対数化を行うことで、回帰分析が可能になります。
$\ln y = \ln a + b \ln x$
【$y = a e^{bx}$の場合】
対数化を行うことで、回帰分析が可能になります。
$\ln y = \ln a + bx$
【$y = a + b \ln x$や$y = a + bx^{-1}$の場合】
一見すると、何らかの式変形が必要ではと思いますが、そのまま式を推計することになります。
【$y = x/(ax +b)$の場合】
この式は、$y’ = 1 / y$、$x’ = 1/ x$とすると、
$\dfrac{1}{y’} = \dfrac{1/x’}{a/x’ + b}$
から、次のようになり、推計を行うことができます。
$y’ = a + b x’$
ポイント
いくつか例を上げましたが、他にもいろいろあります。
ただ、この作業にあたり、重要なポイントがあります。
1つは、線形性が求められるのは、被説明変数と説明変数の線形性ではなく、被説明変数と係数の線形性であるということです。
ですので、$y = a x^b$の場合は、被説明変数と係数は非線形なので、式変形が必要ですが、$y = a + b \ln x$では被説明変数と係数の線形なので、そのまま回帰分析をすることができます。
2つは、予測値を求めるにあたっては、当然ながら、式変形などをした前の数値に計算しなおすことが必要です。
例えば、元の式から対数化した$\ln y = \ln a + b \ln x$を推計しても、予測値は$y = a x^b$により計算する必要があるということです。
3つは、このようなモデルは、被説明変数に対する説明変数の効果について、注意が必要になります。
通常の$y = a + bx$というモデルならば、$dy/ dx = b$であり、説明変数$x$の効果がそのまま係数$b$で表されますが、上記のような場合には、そうはなりません。
例えば、$y = a x^b$の場合には、$dy / dx = a b x^{b-1}$であり、係数がそのまま説明変数による被説明変数の効果を表していません。
ただ、この$y = a x^b$の場合には、係数$b$は弾力性を表しており、違う形で説明変数から被説明変数への効果を表現していることもあります。
参考
中村隆英『統計入門』
黒住英司『計量経済学』