はじめに
ミクロ経済学の基本として、完全競争下で生産者や企業がどのような行動をとるかというものがあります。
完全競争下にあるので、企業は、プライステーカーとして、価格はコントロールできず、価格を所与として、生産量を調整して、利潤を最大化すると考えられます。
すなわち、
利潤 = 売上 – 費用
という式のもと、利潤を最大化すると考えられます。
そして、この式を生産量で微分すれば、企業の利潤最大化条件を得ることができます。
ただ、企業は
・生産量を調整する
・生産要素を調整する
の2つのパターンがあります。
いずれかに着目するかで、少し異なってくるのでので、それぞれについて説明したいと思います。
生産量を調整
企業の利潤を$\pi$、価格を$p$、生産量を$x$、費用関数を$C(x)$とすると、上記の式は、次のように表せます。
$\pi = px \; – \; C(x)$
$px$は売上であり、生産量$x$が増加するほど、費用を表す費用関数$C(x)$の値も大きくなります。すなわち、生産量によって、費用が変わると考えます。
そして、この式について、$x$で微分し、$0$とすると、
$\dfrac{d \pi }{dx} = p \; – \; C'(x) = 0$
であり、次式を得ることができます。
$p = C'(x)$
ここで$C'(x)$は、追加的に生産量を増やしたときの増加する費用を表し、「限界費用」と言いますが、この式より、
価格 = 限界費用
となっていることが分かります。
すなわち、企業は、利潤を最大化するためには、限界費用と価格が等しくなるように、生産量を決定すると考えられます。
生産要素を調整
上記では、生産量$x$により費用関数が変化すると考えましたが、例えば労働力のように生産要素$L$が変化するときに、どうなるかを考えます。
生産要素の大きさで生産量が変わるので、生産関数を$f(L)$とすると、生産量は
$x = f(L)$
となります。
他方、生産要素1単位当たりの価格を$w$とすると、企業の利潤は、次のようになります。
$\pi = p f(x) \; – \; wL$
この式で、$pf(x)$は売上であり、$wL$は費用となっています。
そして生産要素の量を調整して、利潤を最大化するので、$L$で微分し、$0$とすると、
$\dfrac{d \pi }{dL} = p f'(L) \; – \; w = 0$
であり、
$f'(L) = \dfrac{w}{p}$
を得ることができます。
$f'(L)$は追加的に生産要素を増やしたときに増加する生産量であり、限界生産力と言います。そして、右辺の$w/p$は、実質的な生産要素費用を表すので、
限界生産力 = 実質生産要素価格
となります。なお、実質生産要素費用について、イメージが付きにくければ、生産要素を労働力としたときには、$w$は賃金を表すと考えられるので、
限界生産力 = 実質賃金
となります。
まとめ
完全競争下での企業の行動ですが、生産量を調整するか、生産要素の量を調整するかで、モデルの定式化が異なるので、少し内容が異なってきます。
企業の行動 | 利潤関数 | 利潤最大化条件 |
---|---|---|
生産量を調整 | $\pi = px \; – \; C(x)$ | $p = C'(x)$(価格 = 限界費用) |
生産要素を調整 | $\pi = p f(x) \; – \; wL$ | $f'(L) = \dfrac{w}{p}$(限界生産力 = 実質生産要素価格) |
なお、必ずしもではありませんが、例えば、不完全競争の場合には「生産量を調整」、マクロ経済学では生産要素が労働と資本の2つがあるため、「生産要素を調整」する形が多いと思います。
ミクロ経済学を学んでいると、ごちゃごちゃになることもあるので、この点には注意をしましょう。