概要
ミクロ経済学を勉強しようと思ったとき、何となく、教科書などを頭のほうが勉強していくことになると思います。
最初は、効用のなんかが出てきて、その後企業がどうとか、均衡だとかという話になり、いつの間にか、何のことをやっているか分からなくなることが多いと思います。
ときには、一部を飛ばしたりすると、一層、何を勉強しているのか分からなくなってしまいます。
ただ、ここの話は別として、ミクロ経済学の全体像を把握してから、勉強を始めたほうが、それぞれのつながりなどが分かり、効率的だと思います。
そこで、教科書的なミクロ経済学のテーマについて、全体像を話したいと思います。
ミクロ経済学のテーマの大分類
ミクロ経済の教科書においては、大きく分けると、次に分類できます。
(なお、教科書においては、取り扱っていたり、取り扱っていないものもあります)
①基礎
・消費者行動
・企業行動
・市場均衡
②応用
・不完全競争
・不確実性
・公共財
・ゲーム理論 など
ここで重要なのは、一冊の教科書の中に、「基礎」と「応用」のテーマがあるということです。それを混在してしまうと、訳が分からなくなるので、注意が必要です。
これを踏まえて、以下より、基礎・応用について、説明します。
ミクロ経済学の基礎テーマ
基礎的なテーマとしては、「消費者行動」「企業行動」「市場均衡」の3つありますが、「消費者行動」「企業行動」と「市場均衡」では、若干、色合いが違います。
まずは、「消費者行動」「企業行動」は、消費者や企業が、あくまでも個々のエージェントとして、どのように行動するかという話です。ですので、他のエージェントの行動は、どうでもいいです。
他方、市場均衡では、個々のエージェントが最適に行動した結果、他のエージェントとの関係を考えます。例えば、消費者が2人いた場合や消費者と企業がいる場合などです。
その上で、市場均衡においては、部分均衡と一般均衡の話が出てきます。
部分均衡は、1つの財・サービスについて、消費者・企業が最適に行動した結果、どうなるかという話です。1つの財・サービスしか見ていないので、「部分」と呼ばれています。一般的に、経済学といった場合、需要・供給という話が出てきますが、まさしくこの部分均衡の話が、需要・供給の話です。
一般均衡は、1つの財・サービスではなく、いくつもの財・サービスがある場合、複数の消費者・企業が最適に行動した場合に、どうなるかという話です。現実の経済を考えたとき、複数の財・サービス、複数の消費者・企業が登場することが当たり前なので、「一般」と呼ばれています。
そして、複数の消費者・企業などが登場するので、単独で行動したときとは異なり、経済全体として最適かどうかが問題になります。このことを学ぶのが、経済厚生であり、パレート最適などの話です。
以上を表にまとめると、次のようになります。
エージェント | 財・サービス | ||
---|---|---|---|
消費者行動 | 1人の消費者 | 1つもしくは複数 | |
企業行動 | 1社の企業 | 1つ | |
市場均衡 | 部分均衡 | 1人の消費者・1社の企業 | 1つ |
一般均衡 | 複数の消費者・企業 | 複数 |
ミクロ経済学の応用テーマ
上記の基礎テーマは、あくまでも「完全競争」などを前提としたモデルですが、この応用テーマは、完全競争などの前提を外した場合に、どうなるかということを説明するものとなっています。
言い換えれば、基礎テーマのモデルについて、どのような前提が外れているかが、この応用テーマを学ぶ大きなポイントになります。
応用テーマについては、教科書・筆者によって、取り上げられるものがあったり・なかったりしますが、以下ではそのいくつかを説明します。
不完全競争
基礎的なモデルは、完全競争を前提にしていますが、不完全競争ではその言葉の通り、完全競争ではない状況である独占・寡占などが取り上げられます。
このことから、企業行動に修正が加えられ、企業行動のみ、もしくは部分均衡でモデルが説明されることになります。
また、完全競争では、企業は他企業のことを考えずに行動しますが、寡占においてはライバルが見えているので、ライバル企業のことを考えたらどうなるかなども、検討されます。
(後述するように、相手の企業のことを考えるという点で、ゲーム理論とも結びつくことになります)
不確実性
基礎的なモデルでは、完全情報を前提としていましたが、その仮定を外し、情報が不確実な場合の検討が加えられます。
公共財
基礎的なモデルでは、複数の消費者などがいた場合、個々のエージェントが別々に財・サービスを消費します。しかし、行政インフラのように、費用がかかりにくい財・サービスがあったり、消費を個々のエージェントで分配することが難しいものがあったりもします。
そうすると、基礎的なモデルをそのまま適用はできないため、公共財ということで違う分析が行われます。
ゲーム理論
ゲーム理論は、これだけで一つの経済学の分野になるようなものですが、ミクロ経済学の教科書には、その基本的な要素を説明していることが多いと思います。
理由としては、ゲーム理論もミクロ経済学と同じように、個々のエージェントの行動を取り扱っていたり、数学的にも近い部分があるからでしょう。
また、基礎的なモデルでは、他のエージェントの行動を所与とするという仮定をゲーム理論では外しているからだとも言えます。ですので、上記のように、他のエージェントの行動が気になる不完全競争の寡占などで、ゲーム理論が合わせて語られることもあります。
まとめ
ミクロ経済学を学ぼうとしたとき、どうしても全体像を見ずに、とりあえず勉強し始めるということが多いように思います。
ただ、基礎的な部分として、消費者・企業が個々のエージェントしてどのように行動するか、そして消費者・企業が影響しあったらどうなるかという話があり、それを踏まえて、不完全競争などの応用的なテーマが語られているという全体像を把握して勉強したほうが、効率的ではないかと思います。