経済学者を皮肉った有名なジョークとして、缶詰に関するものがあります。
内容としては、次のようなものです。
【缶詰のジョーク】
物理学者・化学者・経済学者の3人が、海で遭難し、無人島に辿り着くことができました。
生き残るためには食料が必要なので、食料を探したところ、運よく浜辺に食料の缶詰を見つけることができました。
ただ、缶切りがないため、この缶詰を開けることができず、3人の学者は話し合いました。
物理学者は、
「缶詰を高いところから落とし、缶詰を壊して開けよう」
科学者は、
「缶詰に火をかけて、中身を熱し膨張させ、缶詰を開けよう」
とそれぞれが言いました。
そして、経済学者は、2人の意見を聞き、次のように言いました。
「その前に、ここに缶切りがあると仮定しよう」
【ジョークの意味】
このジョークには、経済学者に対する2つの皮肉が含まれています。
1つは、「仮定」です。
経済学の多くの理論は、一定の仮定をもとに構成されています。そして、この学問的なスタンスを皮肉っていると言えるでしょう。
ミクロ経済学で最初に出てくる消費者行動は、経済学の基本をなしているものと言えるでしょう。しかし、それらはすべて仮定であり、現実の人間がそのように行動しているかどうか、別の話です。
もう1つは、「ないものを仮定」している点です。
無人島には缶切りがないにもかかわらず、この経済学者は、缶切りがあると仮定しています。
経済学においても、現実的にはありえないような仮定をベースに、多くの理論が構成されています。例えば、完全競争などは、その分かりやすい例の1つかもしれません。
このジョークは、経済学者を皮肉ったものと言えるでしょうが、同時に経済学者で、そうではないと言える人は少ないのではないかと思います。
ただ、経済学は、人や社会現象といった複雑な問題に取り組んでおり、色々な変数・行動パターンをすべて考えると、理論化できないことも事実です。
ですので、色々な変数・行動パターンを制限し、一部の部分のみで分析を行うために、どうしても「仮定」が必要になります。
また、経済学は、ありえない仮定をベースに、その仮定が当てはまらない場合がどうなのかといった視点で、経済理論が発展してきた面もあります。例えば、完全競争をベースに、不完全競争のモデルが出てきたり、情報の非対称性などの理論が生まれてきました。
経済学の痛い面をついたジョークですが、経済学特有の難しさゆえのジョークともいえるでしょう。