はじめに
例えば、仕事をしていると、「付加価値のある仕事をしよう」「お客様に付加価値を提供する」などという会話がなされたりします。
何だか分かったような分からないような言葉ですが、経済学においては、明確な定義があります。
「付加価値とは、生産において、新たに生み出された価値」
のことです。
これでも意味は分からないと思うので、パンを生産する場合を例として、考えましょう。
例
パンは小麦粉から生産され、小麦粉は小麦から作られます。それぞれは1単位から生産できるものとして、価格が次のような形だとします。
パン :500円
小麦粉:200円
小麦 :100円
これらから、それぞれは1単位で生産されるので、この経済においては、次のように800円分の生産が行われたことになります。
500円 + 200円 + 100円 = 800円
しかし、これをこの経済の価値と考えていいかと言えばそうではありません。
なぜなら、パンは小麦粉を仕入れて生産が行われており、小麦粉は小麦を仕入れて作られているからです。上記の「新たに生み出された価値」という点を考えると、それぞれは、次の分だけ価値を生み出していることになります。
パン :500円 – 200円 = 300円
小麦粉:200円 – 100円 = 100円
小麦 :100円 – 0円 = 100円
そして、これらを足し合わせた価値が500円が、付加価値となります。
300円 + 100円 + 100円 = 500円
付加価値
以上のように、ある財が生み出されるには、中間投入財として、いくつもの財・サービスが使われており、その部分を除いたものが、付加価値とされるわけです。
ざっくりと式で表すと、
付加価値 = 財生産額 - 中間投入財額
となります。
付加価値と利益
ところで、上記の付加価値のような式を見たことはないでしょうか。
企業でいえば、中間投入財は仕入れ代に当たるので、付加価値は
利益 = 売上 - 費用
という概念と似ています。このため、付加価値は企業でいえば、利益みたいなものと考えればいいでしょう。
しかし、厳密には異なっています。大きな相違点としては、企業の費用には人件費は入っていますが、付加価値における中間投入財額には人件費は入っていません。
この点で、付加価値とは、企業でいえば、利益と人件費を合わせたものぐらいで考えると、イメージしやすいのかもしれません。
なお、企業経営において、経営状況を示す指標としても、付加価値というものがあり、
付加価値 = 経常利益 + 人件費
などという式が使われたりもしています。