はじめに
産業連関表とは、産業間の取引の状況を示した経済統計です。
現実の経済を考えたとき、例えば、食品製造部門に農業部門から農産物が提供されて、食品製造部門は食品を生産したりします。
このような産業間の取引がどうなっているのかを目的に作成されているのが、産業連関表となっています。
そして、この産業連関表をもとに、建設業の需要が増加したとき、経済全体への影響はどうかなど、経済効果も分析できたりもします。
この産業連関表について、簡単な2部門の場合で、その基本を説明したいと思います。
流れ
産業連関表について、説明する前に、大きな流れを説明します。
まずは、産業連関表があるものとします(統計的には、内閣府や都道府県などにあります)。
これをもとに、投入係数を求め、それを生産額について解くと、各部門の生産額を得ることができます。
そうすると、均衡産出高モデルができ、経済効果などを推計できるようなものができるという流れになります。
①産業連関表がある
②投入係数を求める
③総生産について式を解く
なお、式としてはややこしいですが、行列は使わずに説明を行いたいと思います。
産業連関表
産業連関表とは、次のような表になります。
中間需要 | 最終需要 | 総生産 | |||
---|---|---|---|---|---|
部門1 | 部門2 | ||||
中間投入 | 部門1 | $x_{11}$ | $x_{12}$ | $F_1$ | $X_1$ |
部門2 | $x_{21}$ | $x_{22}$ | $F_2$ | $X_2$ | |
付加価値 | $V_1$ | $V_2$ | |||
総生産 | $X_1$ | $X_2$ |
縦に見ていくと、中間投入と付加価値があり、その合計が総生産額となっています。
例えば、部門1についてみると、$x_{11}$と$x_{21}$を投入して、付加価値$V_1$を計上して、総生産額$X_1$が作られると考えられます。
横から見ていくと、総生産額は、中間需要と最終需要の合計したものとなっています。
例えば、部門2は、中間財として、$x_{21}$と$x_{22}$を需要しており、更に最終需要$F_2$があり、総生産額(総需要)$X_2$となることを示しています。
このように、各部門の投入と需要との関係をベースにしたものが産業連関表となっています。
投入係数
産業連関表をもとに、投入係数というものを求めます。
投入係数$a_{ij}$とは、部門$j$が生産額$X_j$を生産するのに、どれだけ中間投入$x_{ij}$が必要かというものです。
$a_{ij} = \dfrac{x_{ij}}{X_j}$
であり、部門$j$が中間投入$x_{ij}$を割った形で表されます。
この投入係数$a_{ij}$を用いて、先ほどの産業連関表を表すと、次のようになります。
中間需要 | 最終需要 | 総生産 | |||
---|---|---|---|---|---|
部門1 | 部門2 | ||||
中間投入 | 部門1 | $a_{11} X_1$ | $a_{12} X_2$ | $F_1$ | $X_1$ |
部門2 | $a_{21} X_1$ | $a_{22} X_2$ | $F_2$ | $X_2$ | |
付加価値 | $V_1$ | $V_2$ | |||
総生産 | $X_1$ | $X_2$ |
この表について、横から見たときに、次のような2つの方程式になることが分かります。
$\begin{equation}
\begin{cases}
a_{11}X_1 + a_{12}X_2 + F_1 = X_1\\
\\
a_{21}X_1 + a_{22}X_2 + F_2 = X_2
\end{cases}
\end{equation} \quad \cdots \quad (1)$
総生産について解く
$(1)$式から、総生産$X_1$と$X_2$について、式が解け、
$\begin{equation}
\begin{cases}
X_1 = \dfrac{(1 \; – \; a_{22})F_1 + a_{12} F_2}{(1 \; – \; a_{11})(1 \; – \; a_{22}) \; – \; a_{12} a_{21}}\\
\\
X_2 = \dfrac{a_{21} F_1 + (1 \; – \; a_{11}) F_2}{(1 \; – \; a_{11})(1 \; – \; a_{22}) \; – \; a_{12} a_{21}}\\
\end{cases}
\end{equation} \quad \cdots \quad (2)$
を得ることになります。
$(2)$により、最終需要$F_1$と$F_2$を変化させると、総生産$X_1$と$X_2$が変化することになります。
このように、最終需要によって、総生産が定まるので、$(2)$式を「均衡産出高モデル」と言います。
参考
宮沢健一『産業連関分析入門』