$t$期における現物価格を$S_t$、先物価格を$F$とします。
投資家は、$t$期において、先物取引を行うか、現物取引で運用するかの2つの方法があります。
$t$期 $t+1$期
現物価格 $S_t$ → $S_{t+1}$
先物価格 $F$
【先物取引】
$t$期において、先物価格$F$で、原資産を買う場合(ロング・ポジション)を考えます。
差金決済を行うとして、先物取引においては、$t$期においては支払いなどは生じません。
しかし、$t+1$期になると、$t$期に契約した先物価格$F$で原資産を購入し、$t+1$期の現物価格$S_{t+1}$で売却する必要があります。
ですので、先物取引による利益は、次のようになります。
$S_{t+1} \; – \; F$
【現物取引】
現物取引では、$t$期に原資産を購入する必要があり、借入にてその資金を調達するとします。
そして、$t+1$期までの金利を$r$とすると、$t+1$期には$(1+r)S_t$の金額を返済する必要があります。
ところで、$t+1$期に、この資産を現物取引で売却するとしたら、投資家の現物取引の利益は、次のようになります。
$S_{t+1} \; – \; (1+r)S_t$
【裁定】
上記のように、先物取引と現物取引による利益は異なることになります。
しかし、利益が異なるときには、より利益が大きいほうにより多くの投資家が投資を行い、逆に、より利益の小さいほうには取引は行いません。
このように、裁定取引が行われると、先物取引と現物取引の利益は、(理論的には)一致することになります。
$S_{t+1} \; – \; F = S_{t+1} \; – \; (1+r)S_t$
【先物の理論価格】
裁定取引によるこの式を変形すると、
$F = (1+r)S_t$
となります。
すなわち、先物の理論的な価格は、現時点の現物価格に利子を加えたものになります。
言い換えれば、先物の理論価格は、現時点の原資産を借入金利で運用した場合のものに等しいことになります。
参考
釜江廣志(編集)『入門証券市場論』