期待収益や期待効用などを改めて説明したうえで、リスク・プレミアムについて、説明します。
期待収益と期待効用
あるくじ$L$があり、$p$の確率で所得が$x$、$1 \; – \; p$の確率で所得が$y$になるものとします。
このとき、期待収益$E\Pi$は、
$E\Pi = p x + (1 \; – \; p) y$
となります。
他方、このくじの購入者の期待効用$EU$は、
$EU = p u(x) + (1 \; – \; p) u(y)$
となります。
確実性等価(確実性同値額)
ところで、くじではなく、確実に$M$をもらえる場合を考えましょう。
くじを購入したほうがいいのか、確実に$M$をもらったほうがいいのかが、購入者のリスクへの態度で異なってくるでしょう。
効用で考えたとき、
くじを購入するほうを選ぶ ⇒ $EU > u(M)$
確実にもらえる$m$のほうを選ぶ ⇒ $EU > u(M)$
のパターンがありますが、その分岐点である
どちらも等しい(無差別) ⇒ $EU = u(M)$
が重要となってきます。この$EU = u(m)$となるような$M$を「確実性等価」(確実性同値額)と言います。
リスク・プレミアム
確実性等価は、効用で見た場合の考えですが、この確実性等価の$M$を収益レベルで考えましょう。
このとき、くじによる収益と確実にもらえる確実性等価を比較すると、
$r = E\Pi \; – \; M$
のような式で表せ、この$r$を「リスク・プレミアム」と言います。
この式において、くじの購入者の態度は
$r > 0$のとき、リスク回避的
$r = 0$のとき、リスク中立的
$r < 0$のとき、リスク愛好的
とされます。
例えば、$r > 0$のときを考えましょう。確実性等価はこの購入者にとっては、効用レベルでは、くじを購入したときと確実にもらえる場合では無差別です。しかし、期待収益のほうが高いということは、くじを購入することを低く見積もっていることを示しており、その意味で、リスク回避的と考えられます。
リスク・プレミアム・レート
リスク・プレミアムについて、次のように、期待収益ベースで基準化したものを「リスク・プレミアム・レート」と言います。
$\rho = \dfrac{E\Pi \; – \; M}{M}$
ここで、この式を変形すると、
$(1 \; – \; \rho) E\Pi = M$
となり、リスク・プレミアム・レートは、、期待収益に対する確実的に$M$をもらえる場合の割引率になっています。
そして、
$\rho > 0$のとき、リスク回避的
$\rho = 0$のとき、リスク中立的
$\rho < 0$のとき、リスク愛好的となります。
計算問題
別ページで計算問題も用意してますので、是非ともどうぞ。
参考
武隈愼一『ミクロ経済学』
奥野正寛(編著)『ミクロ経済学』