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裁定が働かない場合

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投稿金融論初級
金融論において、裁定が働かない場合について、説明します。
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 金融論や国際金融論においては、投資家は合理的とされ、適切な市場価格と現実の価格にズレがあったり、いくつかの資産間で収益性が異なれば、売買が行われ、価格のずれや収益性が一致するというように、裁定が前提とされています。

 裁定が行わなければ、多くの理論を構築することはできないのですが、現実には、裁定が働かない場合が多くあります。

 例えば、アマノリーのように、ファイナンス理論で説明できないようなことも多くあり、そのような場合には、裁定どころか、投資の意思決定自体が合理的と言えないこともあります。

 一般的には、次のような要因で、裁定が働ない場合があるとされています。

【ファンダメンタルリスク】
 裁定取引の基本は、割安な資産を購入し、割高な資産を売却することが基本になります。

 例えば、割安な証券を購入し、その証券価格が妥当な価格に戻ったときに、売却することで差益を得るというパターンです。
 ただ、割安な証券を購入した後、企業業績悪化などのファンダメンタルズに関する新たな情報が入ると、割安な証券はより一層、下落することになります(なお、この割安な状態から抜け出せないことを、「バリュー・トラップ」(割安の罠)と言います)。

 このように、新たなファンダメンタルズ情報が入った場合、裁定は働かず、これを「ファンダメンタルリスク」と言います。

【ノイズトレーダーリスク】
 市場には、しっかりと情報をもって投資を行う「情報トレーダー」と、あまり情報を持たず投資を行う「ノイズトレーダー」がいるとされます。
 ノイズトレーダーは情報を持たず投資を行うので、損失を重ね、市場からは退出を余儀なくされるとも考えられますが、短期的にはノイズトレーダーの新規参入があったり、情報トレーダーの資金量に限りがあることから、一定のノイズトレーダーが存在することになります。

 この結果、妥当な価格と現実の価格にズレがあり、裁定機会が生じても、そのズレは解消されなかったり、むしろノイズトレーダーにより、そのズレが一層大きくなることがあります。
 
【執行コスト】
 裁定機会があったとしても、その取引にコストが大きければ、裁定取引は行われず、裁定が働かないことになります。

 また、裁定機会があっても、その裁定取引を行うにあたり、投資額が大きくなれば、マーケット・インパクトが発生し、適正な裁定取引にならない可能性もあったり、マーケット・インパクトを考慮して、裁定取引が行われないことがあります。

 例えば、親会社よりも子会社の時価総額が高くなったときには、その差額に裁定機会が生じることになります。親会社を支配できるような水準まで株式を購入すれば、それ以上の資産を手に入れることができるためです。しかし、このような大きな売買を行えば、市場に与える影響も大きくなり、想定外の値動きが予想されるため、裁定が働かないことになります。

参考

  早稲田大学大学院ファイナンス研究科・早稲田大学ビジネススクール(編集)『MBA・金融プロフェッショナルのためのファイナンスハンドブック

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