はじめに
マクロ経済において、中央銀行は、金融政策を担い、通貨の発行や金融調整などを行っています。
「日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする」(日銀法第1条第1講)
これを実行するには、中央銀行が、どのような経済変数にコミットメントするかがポイントとなります。
そして、この目標値を設定する経済変数を「政策変数」と言いますが、中央銀行は、どのような経済変数を政策変数としたらいいのでしょうか。
中央銀行にとっては、大きく言うと、通貨量と金利のいずれを政策変数とするかとなります。
通貨量と金利の関係
ただ、通貨量と金利の間には、一定の関係があります。
通貨を持っていても金利はつかないので、金利が上昇すると、通貨需要は減少します。他方、中央銀行の通貨供給量自体は、金利とは無関係です。
そうしたとき、通貨と金利の関係は、下図のようになり、通貨供給量と通貨需要量が一致するところで、市場金利が決まることになります。
なので、通貨供給量を増減させれば、金利も変化し、逆に、金利を変化させようと思えば、通貨供給量も増減させる必要が出てきます。
2つの政策変数
上記の通貨量と金利の関係を踏まえ、通貨量・金利において、それぞれを政策変数とした場合を考えましょう。
通貨量
通貨量を政策変数として、通貨供給量を一定とする場合を考えましょう。
通貨供給量が一定なので、通貨需要量が増加すれば(上記の図では通貨需要量を右にシフト)、金利は上昇し、逆に、通貨需要量が減少すれば(上記の図では通貨需要量を左にシフト)、金利は低下することになります。
金利
金利を政策変数として、金利を一定とする場合を考えましょう。
金利を一定にするため、通貨需要量に合わせて、通貨供給量を調整する必要があります。通貨需要量が一定とすると、金利を高くするには、通貨供給量を減らし(上記の図では通貨供給量を左にシフト)、逆に低金利を目指すには、通貨供給量を増やす(上記の図では通貨供給量を右にシフト)必要があります。
金利が政策変数として選ばれる理由
上記のように、理論的には、通貨量と金利のいずれかが政策変数として、可能性があるわけですが、実際は、金利が政策変数として選ばれています。
季節や税金の支払いなど、通貨需要は変動が大きいため、通貨量を政策変数として、通貨供給量が一定のままでは、金利が大きく変動することになります。
しかし、金利によって、長期の設備投資などが決定されることを考えると、短期的に金利が大きく変動する状況は望ましくありません。
そのため、一般的には、金利を政策変数として、中央銀行は金融調整を行っていることになります。
参考
小林照義『金融政策』