はじめに
株価は、日々の取引でどんどんと変化します。
人気があれば、予想以上に株価は高騰し、逆にその株価の企業に何か問題があるとされれば、下落してしまいます。
ただ、このような日々の動きではなく、本来の「あるべき株価」がいくらになるかという点も重要です。そのような株価が分かれば、日々、株価がどうなるかを気にすることなく、最終的にはその「あるべき株価」に向かうと考えられ、今後、中長期的に株価がどうなるを予想することができるからです。
そうしたとき、本来の「あるべき株価」はどのように考えたらいいのでしょうか。
最も素直なのは、投資家にとって、配当額が大きい株式がよい株式と考えられるでしょう。
このような考えのもと、考えられたのが「配当割引モデル」です。
配当割引モデル
基本モデル
配当割引モデルにおいては、今後得られる配当の金額の合計が株価であると考えます。
ただ、将来の配当なので、名称の通り、割引率を用いて計算が行われます。
株価を$V$、$t$期の配当を$\pi_t$、割引率を$r$とすると、配当割引モデルでは、株価は次のようになります。
$\displaystyle V = \sum_{t=1}^{\infty} \dfrac{\pi_t}{(1+r)^t}$
ゼロ成長モデル
基本モデルでは、将来の配当がいくらになるかを予想しなければならず、しかも無限大時間まで考える必要があります。
これでは実際のところ、計算が不可能ともいえます。
そこで基本モデルを簡略化するため、毎期の配当が等しいとし、
$\pi = \pi_1 = \pi_2 = \cdots$
が成立している場合を想定します。そうすると、基本モデルの式から、株価は
$V = \dfrac{\pi}{r}$
となります。
例えば、配当が10円、割引率(金利)が1%ならば、10/0.01から、株価は1,000円となります。
一定成長モデル
ゼロ成長モデルにおいて、配当が毎期一定としていますが、一定率$g$だけ、配当が年々大きくなる状況を考えましょう。
すなわち、
$\pi_t = (1 + g)^t \pi_1$
が成立している状況です。
このとき、株価は、次のようになります。
$V = \dfrac{\pi_1}{r – g}$
ポイント
配当割引モデル自体は、あまり難しい話ではありません。
若干、数学的で数式が出てきたりもしますが、最終的な式は単なる四則計算で、簡単に株価を計算できたりもします。
ただこの配当割引モデルの考えは、株価だけではなく、不動産価格や企業価値の算定に使われたりしている点で、非常に重要です(この場合、毎期得られるのは配当ではなく収益なので、収益還元法やインカムアプローチなどという言い方をします)。
一定成長モデルは別として、基本モデルやゼロ成長モデルは、この点でも非常に大事なので、しっかりと覚えておいたほうがいいでしょう。
参考
刈屋武昭・佃良彦(編著)『金融・証券数量分析入門』