ロック・イン効果
ロック・イン効果とは、財・サービスの所有者が、そのスイッチングコストの高さから、売却などが行われずに、そのまま所有が続けられる状態を言います。
ロック・イン効果自体は、税に限った話ではありませんが、税により、ロック・イン効果が生じることがあります。
ここでは、税によるロック・イン効果について、いくつか例を挙げたいと思います。
例
株式
株式を保有している者は、その売却にあたっては、株式譲渡益が発生し、その利益について20%の課税が行われます。
そこで、利益率がα%であっても、(α – 0.2)%が利回りになるため、より多くの利回りを期待している投資家の場合には、税金による利回りの低下から、売却をためらうことになるでしょう。
この結果、株式について、ロック・イン効果が生じることになります。
国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
不動産
土地や建物といった不動産を所有している者が売却をしようとしたとき、売却益が出たら、所得税や住民税において譲渡所得が発生し、上記の株式と同様に、ロック・イン効果が生じることが考えられます。
国税庁「土地や建物を売ったとき」
また、不動産においては、不動産取得税ということで、不動産を購入した者に課税が行われるため、不動産の所有者だけではなく、購入者の面でも、ロック・イン効果があることが考えられます。
総務省「不動産取得税」
なおこれら以外に、不動産取引においては、登録免許税や印紙税などの税が発生することがあります。
農地
農地も不動産の1つですが、農地特有のロック・イン効果があります。
農地においては、固定資産税の軽減措置などがあり、土地を農地として保有していたほうが有利になることがあります。
このため、本来は他の用途でその農地を利用したほうが良くても、農地として所有するということが生じ、ロック・イン効果があると考えられます。
農林水産省「農地に関する税制特例について」
小規模宅地
宅地面積が小さい宅地については、固定資産税が減額されます。
このため、小さな宅地のままで保有していたほうが、この土地の所有者は有利になります。
また、例えば商店街にお店があったときに、1Fがお店、2Fが住宅という場合があります。これは、店主にとって「通勤しなくて済むので楽」「店と家を一緒に建築したら安くなる」などの理由もあるでしょうが、この小規模宅の特例は、このような住宅兼店舗にもその一部が適用されます。
なおこれは、固定資産税だけではなく、相続税においても特例があります。
大阪府「住宅用地の課税標準の特例措置」