ロバート・ウォーレスは、17世紀のスコットランドの牧師で、人口に関する主張をしました。
ウォーレスは、人口変動について、自然的な理由と社会的な理由に分けて、自然的な理由は物質的なものであり、社会的な理由は陣減の感情・情念や制度に依存していると考えました。
そして、人口変動の要因を次のように列挙し、社会的な理由のほうが強い要因であるとしました。
(自然的な理由)
・気温や機構の歓談
・土地の肥沃さ
・季節の変動
・飢餓、地震、洪水 など
(社会的な理由)
・戦争、貧困
・腐敗した制度
・不摂生、放蕩
・不規則な愛
・怠惰
・結婚を妨げるもの
・生殖能力を弱めるもの
・子供の教育をできなくするもの など
以上を踏まえ、一般的格率として、
・農業・商業・技芸を知らない野蛮民族は、それらを知る文明国民ほどに人口は多くなりえない
・すべての国と風土において、人口増加に有利なわけではない
・土地が平等に分けられているとき、単純で節約する生活以上の暮らしはできないが、土地が肥沃なら人口は増加する
・結婚の数には政策上の配慮が必要で、放蕩は結婚を妨げ、奢侈は家族を維持できなくする
・農業・漁業・狩猟は、食料を提供するので大事にしなければならない
としています。
特に、ウォーレスは、人口増加のために、勤労を重視し、奢侈を否定的に考えています。
しっかり人々が勤労を行っていなければ、農業・漁業・狩猟による食料を得ることはできず、様々な財の生産が行われなくなります。
他方、奢侈は人々の単純な好みを失わせ、生活維持に必要なもの以外のものを求めることになり、生活必需品の生産が阻害され、必需品の物価が高くなると考えます。この結果、奢侈が広がると人口は増えないと考えました。
例えば、ウォーレスによれば、古代ローマは広大な領土を有することになりましたが、それが単純な生活様式や好みを破壊し、古代社会にはなかった奢侈を導入したため、人口が減少したとされます。
参考
野原慎司『人口の経済学』