戦前のイギリスにおいて、イギリス・ファシスト連合の指導者として活動したオズワルド・モズレーという人物がいます。
オズワルド・モズレー(1986年~1980年)
当初は保守党や労働党の政治家として活動しますが、ドイツの国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党の台頭やイタリアのムッソリーニ政権の成果を目の当たりにして、ムッソリーニの熱烈な信奉者となり、イギリスファシスト連合を立ち上げました。
ところで、このモズレーですが、経済学史的には、ケインズに先駆けて、有効需要の重要性を説いた人物とも言われています。
労働党員時代の1925年に、彼が主張したところでは、
・社会には潜在的な最大生産力があるが、それが発揮されるには、貨幣的購買力(有効需要)がなくてはならない
・しかし現状は、資本家階級がそれを操作しており、資本家的独占体だけが利益を得るようになっている。
・そのため。労働者階級はインフレや失業の脅威にいつもさらされている
・労働者階級は権力を奪取し、自らの利益のために有効需要を操作し、独占体の社会化を実現する必要がある
というものです。
(なお、後のファシストとなってからは、労働者ではなく、英帝国臣民のためと言い換えがなされたとされます)
そして、国家投資局と呼ばれる組織を設立し、国内市場の保護・育成も訴えました。
よく日本の高橋是清の高橋財政は、ケインズに先駆けて実施されたケインズ政策であるなどと言われたりもしますが、イギリスにもこのような人物がいたというのは興味があるところです。
保守党・労働党・ファシスト党といった政治遍歴を考えると、真の政治的信条は分かりませんが、ファシストで名を成した人物で、このようなことを主張したというのが、特に興味が惹かれるところです。
参考
神武庸四郎・萩原伸次郎『西洋経済史』