概要
今更いうことでもありませんが、日本は少子化に陥っています。
少子化についてはどうでもいいという人もいるでしょうが、多くは今後の日本について、問題だと考える人が多いでしょう。
それでは、少子化の原因となると、人によって、意見が多く異なってます。
例えば、
「夫が家事を手伝わず、妻にとっては子育てが大変」
「若者の所得が少ないから」 などなど
それぞれの意見はたぶんどれも正しいのでしょう。そして、少子化の原因としては、たった1つではなく、いくつもの要因が重なっていると思われます。
ここで、松田茂樹『少子化論』という著書があります。社会学の本ですが、少子化の原因について整理されているで、それを踏まえ、少子化の原因を整理したいと思います。
少子化の原因
松田氏の整理をベースに、少子化の原因としては、次のようなものがあると考えられます。
①子育てと仕事の両立が難しい
かつては専業主婦というものが多かったのかもしれませんが、女性の社会進出とともに、働く女性が増えています。
他方、子育ては子育てで大変ですが、夫のほうは家事や子育てを手伝ってくれることが少ないため、結婚や出産を遅らせているというものです。
②結婚市場のミスマッチ
時代は大きく変わっていますが、多くの男女が昔ながらの結婚観に基づいており、結婚できる男女が減ったというものです。
男性の実際の年収に比べて、女性が男性に求める年収が大きく異なっていたり、女性は専業主婦願望が強くなっているが、それを可能な男性が少ないといったものです。
③若年層の雇用悪化
「②結婚市場のミスマッチ」とも関連しますが、若年層の非正規雇用の増加で年収などが減少し、結婚・出産を諦めているというものです。
④パラサイト・シングル仮説
学校を卒業後も、親と同居し、基礎的な生活条件を親に依存しているというのが、パラサイト・シングルです。
このような人にとっては、結婚する余裕がなかったり、結婚すると経済的には親元で暮らすよりも厳しくなるため、未婚となっているというものです。
⑤費用の大きさ
子育てや教育には多額のお金が必要になります。1人子供を育てると数千万円ものお金がかかることを考えると、多くの子供を作るほど、経済的には苦しくなります。
このような状況を避けるため、少子化が進んでいるというものです。
そして、自治体によっては給食費の無償化などを行っていますが、正しくこの原因に基づいた施策をいえるとでしょう。
⑥心身の負担
子育てを行うには、多くの労力がかかります。特に、父親が育児に手伝わないと、その負担が母親にすべてかかることになります。また子供を持つということは、責任が生じることにもなり、精神的にも大変です。
このような心身の負担が大きいため、少子化が進んでいるというものです。
⑦都市化
大都市と地方では、出生率が違うことはよく知られています。都市化が進む中、出生率の低下を招いているというものです。
⑧同棲・婚外子の少なさ
日本は他の先進国に比べて、同棲が少なく、出産につながりにくい状況にあるというものです。
また、出産・子育ては結婚というものを前提に制度が設計されており、婚外子は子育てしにくい状況にあり、出産をためらっているというものです。
まとめ
上記を見ると、少子化の原因として大小はあるものの、どれも頷けるものだと思います。
ただ、(婚外子は別として)
結婚 ⇒ 出産 ⇒ 子育て
というプロセスを考えると、どこに力点を置くかで、意見が変わってくるともいえるでしょう。
(松田氏は、少子化対策=子育て対策ではないとし、主要な原因を未婚化にあるとしています)
原因が整理されていないと対策も打てないので、まずはこのような整理・認識が大事だと思います。
参考
松田茂樹『少子化論』