はじめに
経済学の動学モデルにおいて、例えば、最適成長モデルのように、位相図を描く必要があるときがあります。
図に矢印を書くだけの話なのですが、変数がどのように動いていくかを知るためには、重要です。
ここでは、2変数の場合において、位相図の描き方を説明したいと思います。
位相図の描き方
動学モデル
$t$期における2つの変数$x \, , \, y$について、次のような微分方程式であるとしましょう。
$\dfrac{dx}{dt} = f(x \, , \, y)$
$\dfrac{dy}{dt} = g(x \, , \, y)$
このときの位相図の描き方について、順序を追って説明していきたいと思います。
手順
変数$x$と$y$のどちらから始めてもいいのですが、$x$から考えていきます。
【$x_t$について】
まずは、$dx /d t = 0$として、$y$について解くと、
$y = f'(x)$
という式になります。
これを、図示すると、次のようになります。
そして、変数$x$の変化を見るため、$dx/dt > 0$のときを考えると、
$\dfrac{dx}{dt} = f(x \, , \, y) > 0$
であり、
$y > f'(x)$
のときには、$y = f'(x)$よりも、上の部分では$x$は増加、下の部分では$x$は減少することになります。$y < f'(x)$のときには逆になるので、まとめると、次のようになります。
$y > f'(x)$のとき:$y = f'(x)$より上の部分では$x$は増加、下の部分では$x$は減少
$y < f'(x)$のとき:$y = f'(x)$より上の部分では$x$は減少、下の部分では$x$は増加
これより、次のような矢印を入れることができます(なお、下図は$y < f'(x)$の場合)。
【矢印の判断】(補足)
上の符号がややこしければ、$y = f'(x)$の上の部分や下の部分の任意の値を入れて、判断することもできます。
例えば、$y = f'(x)$の上の部分の任意の点の値について、$f(x \, , \, y)>0$ならば、$y = f'(x)$の上の部分では$x$は増加、下の部分では$x$は減少となります。
($y = f'(x)$の上の部分の任意の点の値で判断)
$f(x \, , \, y)>0$のとき:$y = f'(x)$の上の部分では$x$は増加、下の部分では$x$は減少
$f(x \, , \, y)<0$のとき:$y = f'(x)$の上の部分では$x$は減少、下の部分では$x$は増加
($y = f'(x)$の下の部分の任意の点の値で判断)
$f(x \, , \, y)>0$のとき:$y = f'(x)$の上の部分では$x$は減少、下の部分では$x$は増加
$f(x \, , \, y)<0$のとき:$y = f'(x)$の上の部分では$x$は増加、下の部分では$x$は減少
【$y_t$について】
同様に、$y_t$についても考えるとして、$dy /d t = 0$として、$y$について解くと、
$y = g'(x)$
という式になります。
そして、変数$y$の変化を見るため、$dy/dt > 0$のときを考えると、
$\dfrac{dy}{dt} = g(x \, , \, y) > 0$
であり、
$y > g'(x)$
のときには、$y = g'(x)$よりも、上の部分では$y$は増加、下の部分では$y$は減少することになります。$y < g'(x)$のときには逆になるので、まとめると、次のようになります。
$y > g'(x)$のとき:$y = g'(x)$より上の部分では$y$は増加、下の部分では$y$は減少
$y < g'(x)$のとき:$y = g'(x)$より上の部分では$y$は減少、下の部分では$y$は増加
これより、次のような矢印を入れることができます(なお、下図は$y < g'(x)$の場合)。
【位相図】
以上について、まとめると、次のように位相図を描くことができます。
定常点
最後に念のため、定常点について述べておくと、当然のことながら、定常点は、
$\dfrac{dx}{dt} = f(x \, , \, y) = 0$
$\dfrac{dy}{dt} = g(x \, , \, y) = 0$
の場合であり、$y = f'(x)$と$y = g'(x)$の交点が、定常点となります。
最後に
どうもイメージがつかないという方のために、実際の数値例を用意していますので、こちらも見てください。
参考
大浦宏邦『社会科学者のための進化ゲーム理論』