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輸入代替工業化の問題点

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投稿開発経済学初級
開発経済学における輸入代替工業化政策についての問題点を説明してます。
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輸入代替工業化

 「輸入代替工業化」(ISI:Import substitution industrialization)とは、途上国において、ある製品について、先進国からの輸入を制限し、その製品の国内生産を促進し、工業化を図ろうとするものです。

 発展途上国では、海外製品のような良品を生産することができず、先進国から輸入が行われ続けていれば、いつまでも、この国はその製品の輸入に頼らなければなりません。

 そこで、輸入を制限し、自国で生産を行うことで、国内市場にその製品を提供し、工業化を図るということになります。

問題点

 論理としては、納得のいくものですが、その実現にはいくつかの問題点が指摘されています。

 1つは、国内需要の問題です。人口が多い国では問題はありませんが、人口が少ない国の場合、国内生産をスタートしても、それを支える需要が少なく、工業化が難しいことになります。特に、工業製品の生産においては、大規模な設備が必要など、大きな固定費が発生し、規模の経済が働きますが、国内需要が小さければ、規模の経済を享受できません。
 また、発展途上国においては、所得格差が大きいことが多いため、購買力のある中間所得層も薄く、一層、国内需要という面で制約を受ける形になります。

 2つは、輸入代替を行うにあたって、発展途上国では、国内需要を輸入製品から国内製品に代替する必要があるため、国内で生産される製品は、最終財となります。しかし、この最終財を生産するには、機械・設備・部品などの投入財が必要ですが、これは、輸入に頼らざるを得ません。

 この結果、最終財の輸出と投入財の輸入を考えたとき、為替レートをどうするかという問題が生じます。為替レートを割安にすれば、輸出は促進されますが、投入財の輸入に弊害が生じます。特に、輸入代替を想定していることから、あまり輸出について考慮する必要はありません。逆に、為替レートを割高にしたとき、最終財の輸入は高関税率など保護されているため、投入財だけの輸入が促進できることになります。
 
 このようなことから、発展途上国では、為替レートが割高に設定されがちとなり、貿易収支が赤字化してしまうと問題があります。

 3つは、発展途上国にとって、人口が過剰な場合も多く、工業化を図り、その過剰労働力を吸収したいと思うところですが、実際は、大きく労働力を吸収できないという問題があります。
 国内生産を行うには、上記の通り、機械・設備などの投入財は、海外からの輸入に頼る必要があります。他方。海外においては、賃金が高く、できるだけ労働節約的な機械や設備などになっています。ですので、途上国で、使われる投入財も労働節約的であり、過剰労働力の吸収という目的について、限定的になってしまいます。

 更に、投入財への投資にあたり、政府から低利融資などの施策がとられたときには、資本コストが低下するため、発展途上国の賃金の安さというメリットが薄まることになり、労働吸収という目的が弱まわるという効果もあります。

まとめ

 かつては、発展途上国において、輸入代替工業化政策がおこなれてきましたが、このような問題があることから、1980年代以降より、輸出志向型工業化政策がとられ、アジアの経済発展につながったとされています。

参考

  渡辺利夫『開発経済学入門

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