概要
経済学の1つの問題として、格差というものがあります。
そして、格差については、いろいろな要因が考えられますが、経済学的な法則として、「クズネッツの逆U字型仮説」というものがあります。
これは、
「所得水準が低いうちは格差は少ないが、所得が上昇するにつれて格差は拡大し、更に所得が上昇すると格差は小さくなる」
というものです。
横軸に所得水準、縦軸に格差をグラフ化すると、山型の曲線となり、「U字」の逆に見えることから、逆U字型仮説と言われています。
![](https://i0.wp.com/e-econome.com/wp-content/uploads/9362f7e2be10562f874422db82a07fd5.jpg?resize=408%2C257&ssl=1)
要因
なぜ、このような要因が生じるのかについて、考えてみましょう。
格差の拡大
まず格差の拡大について、2つの要因が考えられています。
1つは、そもそもの所得の格差に求めるものです。所得が拡大すると、もともと所得が高い人は投資をしたりして更に所得を増やすことができます。他方、もともと所得が低い人は生活するのに精一杯で投資することができず、大きな所得の拡大はできません。このことから、所得が拡大したとき、貧しい者はそのままで、富める者はより富む状況ができ、格差が拡大するというものです。
2つは、都市と農村を考えたとき、所得が増加すると、農村から都市への人口の移動が起こります。特に、都市においては、規模の経済・集積の効果から、都市に多くの人が集まるほど、その生産量は大きくなります。他方、農村では生産量は大きく変わらず、人口も停滞することから、都市部ではより大きく富を得て、農村ではあまり所得増加の効果を得られないことになり、格差が生じるというものです。
格差の縮小
所得が拡大していくと、政治的にも成熟化し、民主化が進みます。この結果、格差是正を求める政治的な圧力などから、格差が縮小されると考えられています。
日本経済の場合
日本経済において、戦後を考えると、高度成長の1960年代が最も格差が拡大したときでした。
生きていくだけ・生活するだけでどうにもならない人がいれば、うまく高度成長の波に乗り、儲けた人も多い時代です。また、地方から都市への人口移動が起こり、農村よりも都市の発展が大きく、格差は拡大したと言えるでしょう。
しかし、1970年代以降になると、格差の問題が大きくクローズアップされ、地方への投資なども多く増え、格差が縮小したと言えます。
これらのことから、この「クズネッツの逆U字型仮説」は成立していると言えるのかもしれません。
留意点
とはいえ、この「クズネッツの逆U字型仮説」は、実証的には成立しているという話があったり、成立していないという話もあります。
確かに、日本経済においても、上記のようにかつては成立していたかもしれませんが、近年は、むしろ格差が拡大しているという話もあり、何とも言えないというのが、正直なところでしょう。