ルイスの二重経済モデルについて

ルイスの二重経済モデルとは、開発経済学における古典的・基本的なモデルです。「ルイス・モデル」とも言われますが、このルイスの二重経済モデルについて、初級者向けにそのメカニズムを含め、説明します。

概要

 ルイスの二重経済モデルとは、「ルイス・モデル」とも言われ、経済学者ルイス(A.Lewis)などが1950~60年代に体系化した都市・農村の二重構造を説明するモデルです。

 3つの局面を経て、農村がどのように市場経済に移行するのかというメカニズムを説明するモデルとなっています。

ルイス・モデル

前提

 ルイス・モデルにおいては、次のような前提があります。

  ①農業部門では、農業の限界生産性が0の労働者が多くいる(「過剰労働力」)
  ②ただ、農村固有のコミュニティーにより生存可能な賃金(「生存賃金」)は保証されている

 農業の限界生産性が0ということで、農業部門ではこれ以上、労働者を増やしても、生産量は伸びない状態にあるということです。ただし、生存するのに賃金が必要であることから、本来は余っている労働力を安価な賃金で雇っている状態になります。

 分かりやすいイメージで言えば、1つの畑があって、2人でも耕作は可能なのですが、生存賃金が必要なので5人でワークシェアしながら、その1つの畑を耕しているという感じでしょうか。

 このため、この前提においては、農業部門においては、本来は失業していてもおかしくないが、そうはなっていない「偽装失業」が生じていることになります。

ルイスの第1局面

 上記の前提のもと、工業部門が現れたらどうなるでしょうか。

 工業部門の経営者は、安い生存賃金で農業部門の労働力を使うことができます。
 特に、偽装失業が生じており、労働力は実は余っているので、どんどん農業部門の労働力を吸収し、工業部門に働かすことができます(ルイスの無制限労働供給と言います)。

 このように、第1局面では、農業部門から工業部門で働く労働力が出てくる段階です。

ルイスの第2局面

 第1局面で、無制限に農業部門から工業部門に余剰労働力が移動がしましたが、いずれは限界に来ます。

 農業部門の余剰労働力が枯渇し、農業部門の生産にも影響が生じるようになり、いずれは農業の生産量が減少するポイントまで来ることになるでしょう(「食糧不足点」)。

 上記の畑の例で言えば、最初は1つの畑で5人働いており、実質的には3人の余剰労働力が生じていました。そして、3人が工業部門に移動し、この段階で、この畑は2人で耕作されていることになります。ただ、この2人のうち1人でも工業部門に移ると、この畑は耕しきれなくなり、耕作量は減少してしまいます。

 この第2局面では、このように農業生産量まで影響が出始めるような状態です。

 ただ、もともと農業の生産性は低いため、工業部門の経営者は引き続き、生存賃金で労働者を雇うことができるので、農業部門から工業部門への労働力の移動は続きます。

 とはいえ、第1局面とは違い、農業部門の余剰労働力はなくなっているので、食料価格の上昇や生存賃金の上昇が始まります。

ルイスの第3局面

 第2局面で、食料不足や生存賃金の上昇が進むと、農業の限界生産性と生存賃金が等しくなるような水準になります。

 そうすると、工業部門の経営者は、これまでのように生存賃金で労働者を雇おうと思っても、農業部門の労働者は移動しようと思わないため、工業部門では生存賃金以上の賃金を支払う必要が出てきます。

 この結果、生存賃金ではなく、生産性(限界生産力)に基づいた賃金で労働者は働くようになり、農村は市場経済に移行することになります(「商業化点」)。

まとめ

 このモデルは、簡単に言えば、生産性の低い農業部門があり、より生産性の高い工業部門が現れると、労働力の移動があり、工業化が進むという話です。

 ただ、単なる生産性の話だけではなく、農村・農業部門特有の論理である「生存賃金」が生産性に基づいた賃金に代わるという、市場経済への移行もこのモデルには含まれています。

 また当然ながら、農業部門で技術導入・技術革新などがあれば、農業部門の生産性は大きく上がり、一気に「生存賃金>農業の限界生産力」という形から「生存賃金<農業の限界生産力」という形になり、市場経済への移行が一気に進むことも示しています。

開発経済学
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