はじめに
開発経済学において、各国でどのぐらいの人たちに貧困に陥っているかを知ることは大事です。
最も簡単なものは、貧困線以下にあるような貧困者数が人口のうち、どのぐらいいるかというものです。
人口を$N$として、貧困者数が$P$とすると、
貧困人口比率$= \dfrac{P}{N}$
を計算することです。
ただこれについては、問題があり、いくつかの貧困指標があります。
貧困指標
貧困ギャップ比率
例えば、3人の人がいて、それぞれの年収が300万円、100万円、50万円とします。貧困線が150万円とすると、150万円以下の年収の人は2人いるので、
貧困人口比率$= \dfrac{2}{3} = 66.6%$
となります。
しかし、年収100万円の人が年収120万円に、年収50万円の人が年収70万円になったとしましょう。こうなったとしても、この2人は貧困線以下のままなので、貧困人口比率でみても変化はありません。
経済全体として、生活水準がどのように変化したかは、貧困人口比率では分からないため、貧困ギャップ比率という指標があります。
貧困者の所得を$y_i$、貧困線の所得を$\bar{y}$としたとき、
貧困ギャップ比率$\displaystyle = \dfrac{1}{N} \sum_{i=1}^P \dfrac{\bar{y} \; – \; y_i}{\bar{y}}$
となります。
この指標においては、貧困者における貧困線と所得の差について、平均をとっているので、上記のような変化を捉えることができます。
二乗貧困ギャップ比率
上記の例で考えたとき、年収100万円の人の年収が120万円に、年収50万円の人の年収30万円になったとします。
年収が最も低い人の年収が50万円から30万円に減少して、経済全体では貧困が悪化していると考えることもできますが、貧困ギャップ比率では変化はないことになります。
そこで、貧困ギャップ比率にウエイトをつけるために考案されたのが、二乗貧困ギャップ比率です。
二乗貧困ギャップ比率$\displaystyle = \dfrac{1}{N} \sum_{i=1}^P \dfrac{(\bar{y} \; – \; y_i)^2}{\bar{y}^2}$
FGT指標
上記をより一般化したものとして、
FGT指標$\displaystyle = \dfrac{1}{N} \sum_{i=1}^P \dfrac{(\bar{y} \; – \; y_i)^\alpha}{\bar{y}^\alpha}$
というものがあります。
なお、$\alpha=0$のとき貧困人口比率、$\alpha=1$のとき貧困ギャップ比率、$\alpha=2$のとき二乗貧困ギャップ比率となっています。
参考
ジェトロ・アジア経済研究所・高橋和志・黒岩郁雄・山形辰史(編)『テキストブック開発経済学』