中所得国の罠
発展途上国が「貧困の罠」を抜け出して、経済成長をするが、一定水準に達すると、成長が鈍化し、先進国にはなれないという状況が生まれたりします。
例えば、南アメリカの国々の多くは、決して低所得国ではありませんが、先進国にはなれていません。そして、このような状況は数十年以上続いています。
そして、このような状況を、「中所得国の罠」と言います。
もちろん、中所得国も経済成長が止まっているわけではなく、ある程度、経済は成長しています。しかし同時に、先進国も経済成長しているため、先進国並みの成長率では、いつまでも先進国に追いつくことはできません。
つまり、中所得国において、経済成長はしているが、先進国と同等かそれ以下でしか成長できていない状況といえるでしょう。
なぜ、罠に陥るのか?
なぜ、このような状況に陥るのでしょうか。
これについては、ソローモデルなどで検討できたりと、この現象を捉えるフレームワークで異なりますが、ここでは、産業構造という点で、説明します。
先進国では技術集約的産業が中心であり、中所得国では労働集約的産業が中心となっているとしましょう。
このとき、中所得国においては、技術集約的産業に構造変化をしない限りは、先進国になれません。
そして、中所得国は、技術集約的産業について、2つの方法をとることができます。
①海外投資
1つは、投資を受け入れ、外国企業に自国で操業してもらう。
②研究開発
もう1つは、研究開発などを行い、自国で技術集約的産業を育成するというものです。
いずれの場合にも、一定のコストがかかるとすると、初期の技術水準で、どちらをとるかが異なってきます。
初期の技術水準が高ければ、自国で模倣などを通じて研究開発し、技術集約的産業を育成したほうが安上がりです。
逆に技術水準が低ければ、研究開発を行う費用は非常に高くなり、むしろ海外投資を行ったほうが、技術集約的産業を自国に導入しやすくなります。
そして、多くの中所得国では、初期の技術水準が高くないため、海外投資を受け入れたほうがよく、技術進歩はあまり起こらない状況になります。
結果、技術水準が低いままなので、中所得国は先進国にはなれないというが、中所得国の罠の原因と考えられています。
参考
戸堂康之『開発経済学入門』