ハーディング現象
ハーディング現象とは、行動経済学における人間の特徴の一つで、人間は多くの人が行っていることに追従する傾向があるというものです。
ハーディング現象は、規範的要因と情報的要因の2種類により、引き起こされるとされます。
(規範的要因)
ほとんどの人は集団に属し、その集団に適応していますが、その集団における社会規範によって、人間の意思決定は影響を受けます。規範的要因は、このような社会規範により、他の人と同じような行動をとるとされます。
(情報的要因)
情報的要因とは、他者の行動から情報を入手するときに生じるハーディング現象です。
あまり情報が得られなかったり、情報を得るのにコストが生じるとき、他者の行動から簡単に情報を得ることができるとき、生じやすいと考えられます。
特に、情報的要因に基づいたハーディング現象については、ヒューリスティックが関係しているとされます。
ハーディング現象の負の外部性
人間は集団に属している以上、社会規範に従う必要があり、他者と同じような行動をとることが大事であり、当たり前であるとも言えます。
しかし、ハーディング現象は負の外部性をもたらすとされます。
例えば、2つの店があったとして、1つは非常に味は美味しいがあまり客が入っていない店舗、もう1つは味は普通だが列が並ぶほどの人気店だったとしましょう。
このとき、実際の味は別として、後者の列ができている店のほうが評価されたり、より客を呼び込みやすい状況が生まれることになります。
これは正しくハーディング現象の1つですが、真の評価とは別の評価がなされたり、客数にも歪みが生じたりするので、ハーディング現象には、負の外部性を生じさせる可能性があります。
ハーディング現象と意思決定
ハーディング現象により、人間は、自分の意思とは別に、他の人を模倣して意思決定を行うことになりますが、評判が加えられると、より一層、個人の意思とのズレが大きくなる可能性があります。
例えば、ある人が行動をとるに際して、2つの選択肢があるとします。この人にとっては、
① あまり利益は得られないと思っているが、他の人が多くやっているもの
② 大きな利益が得られると思っているが、他の人がほとんどやっていないもの
このとき、この人にとっては、合理的には後者の②の選択肢を選ぶことになりますが、評判という要素を考えると、前者の①を選択してうまくいかなくてもこの人にとっては評判はあまり傷つきませんが、後者の②の選択で失敗したときには、この人の評判は大きく傷つくことになります。
ですので、この人にとっては、後者の②の選択を行ったほうがいいということになります。違う言い方をすれば、信用に関して、人間の損失回避行動を考えれば、このような選択になる可能性が大きいでしょう。
参考
ミシェル・バデリー『行動経済学』
真壁昭夫『行動経済学入門』