はじめに
経済学において、伝統的には割引率は一定とされてきました。
しかし、割引率は時間と共に変化し、一定でないことが、行動経済学の実験で知られています。
双曲割引モデル
双曲割引モデルにおいては、近い将来ほど割引率は高く、遠い将来になると割引率は低くなるとされています。
つまり、人間はせっかちであり、近い将来ほど価値を高く評価するとされています。
図表に表すと、下図のようになります。
伝統的な経済学において想定されているのは、一定の割引率ですが、行動経済学における双曲割引モデルでは、時間が経過するごとに割引率は低くなるとされています。
そして、この双曲割引モデルについて、実験から、次のようなことが分かっています。
①割引率の低下
上述の通り、期間が長くなるほど、割引率は低下する。
②報酬の大きさ
報酬の金額が大きくなるほど、割引率は妥当であるが、金額が小さくなるほど、割引の変化は大きくなる。
(報酬の金額が大きくなるほど、割引率は低下するが、その低下は緩やかになる)
③利得と損失
利得に対する割引は、損失に比べて高くなる。
報酬を受け取る場合は早く支払いを求めるのに対し、損失においては支払う額を遅らせてより多く支払うことは避けがちである。
最後に
この双曲割引モデルについては、直観的にも理解しやすいように思います。
ただ、伝統的な経済学の割引の考えとは異なり、また実験により裏付けられているという点が、重要なポイントと言えるでしょう。
なお、双曲割引モデルが数学的にどのようになるかを知りたい方は、「双曲割引モデルの数学的な表現」も覗いてください。
参考
リチャード・セイラー『セイラー教授の行動経済学入門』
真壁昭夫『行動経済学入門』