ヒューリスティック
行動経済学において、人間の非合理性が語られますが、その1つとして、ヒューリスティックがあります。
ヒューリスティックとは、
「物事をざっくりととらえるという人間の認知様式のこと」
です。
人間は、いつも熟慮していたり、複雑に物事を考えていては、日常生活に支障をきたすため、物事を単純化して考えたり、大まかに把握することは必要です。
しかし、このような単純化が行き過ぎると、問題となります。
ヒューリスティック例
【単純化】
ヒューリスティックの中でも典型的なもので、複雑な情報をざっくりとつかむというものです。
これにより、人間は意思決定が促進させますが、物事の重要な点を見落とす可能性があります。
【アンカーリング】
アンカーリングとは、潜在的に意識の中に刷り込まれた情報のことです。
人間は、顕在的に意識された情報だけでは生活はできませんが、同時に、誤りをもたらす可能性があります。
【利用可能性】
人間は、利用可能性が高いものを過大に評価してしまうという傾向があるというものです。
これには、物理的利用可能性と認知的利用可能性の2つがありまう。
物理的利用可能性とは、物理的に入手がしやすい情報のことです。例えば、テレビやネットなどで簡単に色々な情報を手に入れることができますが、そのような情報を過大に評価するというものです。
認知的利用可能性は、自分自身の記憶や経験の中で、印象深く残っている情報を過大に評価するというものです。そのような記憶・経験は大事ですが、適切にその記憶・経験を把握・解釈していないと、意思決定を誤りに導くことになります。
【初頭効果】
最初に得た情報により、後の情報の価値判断が影響を受けるというものです。
人は見た目が大事とされますが、初対面の人に対しては、この初頭効果が働くためと考えられます。
【親近効果】(クライマックス効果)
これは、初頭効果とは逆に、後に記憶された情報のほうが、記憶されやすいというものです。
【代表性バイアス】
人や物事に対して、一部の情報がすべてを表していると思い込み、他の情報を捨象・認識をしてしまうというものです。
例えば、日本人だからこうだとか、レッテルのようなものもありますし、赤字ならば株価は低いといったようなものもあります。
【ギャンブラーの誤謬】
特定のことが起こる確率を、自分の主観や感覚で高く見積もってしまうことです。
【連言の誤り】
連言とは、「AかつB」という状況です。そしてA・Bそれぞれの発生確率が高いにもかかわらず、このAかつBという事象が発生する確率を高く見積もってしまうことです。
例えば、結婚相手を探すとき、頭がよく収入が高い人を選択するような場合です。
【経験的な見方の過大評価】
経験的な見方で、因果関係を判断し誤りを犯すというものです。
例えば、ファストフードの注文の仕方を知らなければ、店に行ったとき、席に座り、店員が来るのを待ち続けるといったことです。
【因果関係の過大評価】
過去に相関関係があったことを、因果関係があったと勘違いするというものです。
例えば、ジンクスというものがこれにあたるでしょう。過去に、何度か赤いネクタイをして商談がうまくいったときに、赤いネクタイをしているから、うまくいくといった場合です。
【帰属理論】
周囲の事象の原因を自分にあると思ったり、もしくは、他者にあるとみなす傾向があるというものです。
例えば、応援しているプロ野球チームの試合について、観覧をしたときにはそのチームが勝ったとすると、自分が試合を見に行ったから、そのチームは勝ったと思うといったものです。
参考
真壁昭夫『行動経済学入門』
リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン『NUDGE 実践 行動経済学 完全版』