ムカデゲーム
ムカデゲームは、ゲーム理論に出てくる展開形ゲームの1つで、行動経済学における実験でも使われているゲームです。
まず、ムカデゲームにおいては、2人のプレイヤーがおり、それぞれ2回まで選択を行います。
プレイヤーの選択肢は、ゲームを「続ける」か「終了させる」の2つです。
利得については、最初に2人の利得の合計を5として、ゲームを続けるほど、その合計の利得は倍になります。そして、その合計の利得について、ゲームを終了させたものが80%を受け取り、もう1人が20%の利得を受け取るとします。
ルールとしてはこのようなものですが、分かりにくいので、図で説明します。
それぞれの黒丸aにおいて、プレイヤー1と2が選択を行います。そして、プレイヤーは続ける(P)、終了する(N)を選び、(プレイヤー1の利得、プレイヤー2の利得)を得ることになります。
①a11
プレイヤー1が選択を行います。
Pを選択 ⇒ 2人の合計利得が5から倍の10になり、プレイヤー2の手番になる
Nを選択 ⇒ ゲームは終了し、2人の合計利得を分け合い、プレイヤー1は4、プレイヤー2は1の利得を受け取る
②a21
プレイヤー2が選択を行います。
Pを選択 ⇒ 2人の合計利得が10から倍の20になり、プレイヤー1の手番になる
Nを選択 ⇒ ゲームは終了し、2人の合計利得を分け合い、プレイヤー1は2、プレイヤー2は8の利得を受け取る
①a12
プレイヤー1が選択を行います。
Pを選択 ⇒ 2人の合計利得が20から倍の40になり、プレイヤー2の手番になる
Nを選択 ⇒ ゲームは終了し、2人の合計利得を分け合い、プレイヤー1は16、プレイヤー2は4の利得を受け取る
①a22
プレイヤー2が選択を行います。
Pを選択 ⇒ 2人の合計利得が40から倍の80になり、ゲームは終了。
プレイヤー1は64、プレイヤー2は16の利得を受け取る
Nを選択 ⇒ ゲームは終了し、2人の合計利得を分け合い、プレイヤー1は8、プレイヤー2は32の利得を受け取る
特徴
このゲームの利得を見れば分かるように、できるだけゲームを続けたほうが、プレイヤーの利得が高くなります。
言い換えれば、相手のプレイヤーがゲームを終了させないという信頼が高いほど、プレイヤーは多くの利得を得られることから、「信頼ゲーム」とも言われています。
他方で、相手のプレイヤーを信頼せず、合理的に行動した場合には、π1が結果となり、プレイヤー1は4、プレイヤー2は1という最も少ない利得になります。
理由としては、後ろ向き帰納法により、a22の選択にあたり、プレイヤー2にとっては、π5とπ4の利得を比較するとπ4のほうが利得は大きくNを選択します。このようにプレイヤー2が行動することをプレイヤー1が考えると、a12においてπ4とπ3の利得を比較し、プレイヤー1はNを選択します。
このように各プレイヤーが相手を信頼せず、先読みをすると、結局は、プレイヤー1がa11でNを選ぶということになります。
行動経済学の実験
このムカデゲームについて、行動経済学の実験では、完全に相手を信頼するようなπ5の利得にようには勿論なりませんが、ゲーム理論の部分ゲーム完全均衡のπ1にもならず、1回だけ信頼するというπ2やπ3が最も多くなっています。
ある意味、完全には相手を信頼しないが、少しだけは信頼してみるという、人間らしい結果になっていると言えるでしょう。
参考
土橋俊寛『ゲーム理論』
岡田章『ゲーム理論・入門』