はじめに
時間の順序によって与えられたデータを時系列データと言いますが、通常、いくつかの変動が合成されたものとなっています。
例えば、教科書の購入額という月次の時系列データがあるとします。教科書の購入なので、当然ながら、春にはその数値が大きくなるでしょう。他方、少子化の影響で、数年間で見たら、全体として、その数値は低下傾向がみられるかもしれません。
このように、時系列データは、いくつかの変動が合わさったものであり、それらの変動を分けて考える必要があります。
そして、一般的な方法として、次の4つに分けられます。
・長期変動
・循環変動
・季節変動
・不規則変動
変動の種類
長期変動(トレンド)
長期変動は、傾向変動・趨勢変動とも呼ばれ、長期にわたる基本的な変動方向を表わすものです。
最初の教科書の例でいえば、少子化の影響による教科書購入額の低下は、この長期変動にあたると言えるでしょう。
長期的な変動なので、急激に変わることはあまりなく、滑らかな変化が想定されます。
循環変動(サイクル)
トレンドを中心に、上昇・下落の変動を繰り返すようなものです。
例えば、景気循環などは、この循環変動の代表と言えるでしょう。
ただ、トレンドを中心にと述べたように、循環変動はトレンドと大きく関わっています。例えば、上昇・下落を繰り返すサイクルが見られるとともに、そのサイクルの値が、全体として上昇しているような場合です。このようなときには、長期変動と周期変動をまとめて、トレンド・サイクルとして、取り扱われることもあります。
季節変動
言葉の通り、季節の影響によって生じる変動です。
季節によって、自然現象が異なり、経済はその影響を受けることから、季節変動が生じます。また、イベント・行事などの経済的・社会的な要因で、季節変動が生じることもあります。
なお、季節変動は、循環変動と似たような部分があり、循環変動の1つと考えることもできますが、季節変動自体、よく見られる変動なので、分けて考えることが多くなっています。
不規則変動
上記の3つの変動に含まれない、規則性が見つからないような変動です。
経済現象は、規則だけで動いているわけではなく、ランダムに変動する偶然変動を伴っていることが一般的です。
また、戦争などのように、規則性はありませんが、経済に大きな影響をもたらすような変動もあります。
モデル
元々の時系列データである原系列を$y$、トレンドを$T$、循環変動を$C$、季節変動を$S$、不規則変動を$I$とし、これらを分解できれば、次のようなモデルが想定できます。
$y_t = T_t + C_t + S_t + I_t$
足し算をした形なので、これを加法モデルと言います。
この他に、次のような乗法モデルなども想定できます(ただし、対数化すれば、加法モデルになります)。
$y_t = T_t \cdot C_t \cdot S_t \cdot I_t$
参考
中村隆英・美添泰人・新家健精・豊田敬『経済統計入門』