定常性
時系列分析において、確率変数の集合
$\{ y_t \} = \{ \cdots \, , \, y_{-1} \, , \, y_0 \, , \, y_1 \, , \, \cdots \}$
を考えるとします。
このとき、この確率過程が次の性質を持つとき、「定常的」(厳密には弱定常的)と言われます。
(1)$E(y_t) = \mu < \infty$
(2)$V(y_t) = \gamma(0) < \infty$
(3)$Cov(y_t \, , \, y_{t – s}) = \gamma(s) \quad (s > 0)$
性質の(1)(2)は、この確率過程の平均と分散は、すべての$y_t$で一定で共通であることを意味しています。言い換えれば、平均と分散は$t$に依存しないことを表しています。
性質の(3)は、自己共分散は、時点の差である$s$にのみ依存していることを意味しています。
定常的確率過程の例(ホワイトノイズ)
定常的確率過程の例として、最も簡単なものとして、ホワイトノイズがあります。
ホワイトノイズを$u_t$とすると、ホワイトノイズは次の3つの性質を満たしています。
(1)$E(u_t) = 0$
(2)$V(u_t) = \sigma^2$
(3)$Cov(u_t \, , \, u_s) = 0 \quad (t \neq s)$
なぜ、定常性が必要なのか
時系列データを扱う際に、例えば工学的なデータならば、任意の$t$期において、いくつものデータを用意することができます。
例えば、$x$というデータについて、次のように$a \, b \, c$という3種類のデータを用意することができるでしょう。
$x_0^a \, , \, x_1^a \, , \, x_2^a \, , \, \cdots$
$x_0^b \, , \, x_1^b \, , \, x_2^b \, , \, \cdots$
$x_0^c \, , \, x_1^c \, , \, x_2^c \, , \, \cdots$
ところが経済学においては、GDPやインフレ率などを分析することになるので、いくつものデータを用意することは難しいのが現実です。
なので、GDPならばGDPで1つの確率過程に従っていると考える必要があります。
ただ、そのデータについては、何らかの特徴を備えている必要があり、定常性の仮定を加えて、分析する必要性が出てきます。
逆に言えば、$y_{t-1} \, , y_t \, , \, y_{t+1}$などで、それぞれが違う母数・特徴を有しているとすれば、データの共通性は乏しく、分析の使用がありません。
ですので、定常性の仮定が必要となるわけです。
参考
羽森茂之『ベーシック計量経済学』
山本拓『経済の時系列分析』