日常的な「割引」
日常生活において、「割引」という言葉があります。
例えば、買い物をするときに、商品を安く買えるチケットを「割引券」などというように、商品が安く買える状態で「割引」という言葉が使われます。
しかし、経済学においては、ちょっと違った意味合いとなります。
経済学における「割引」
経済学では、割引とは、次のようなことを表します。
「将来の価値を現在の価値に直すこと」
これでは分かりにくいので、例を示しましょう。
現在、10,000円もっていて、1年間の金利が10%としましょう。
この10,000円を預金すると、1年後には、10,000円は金利がついて11,000円になります。
10,000円 × 1.1 = 11,000円 (1.1は、元本1と金利0.1を足したものです)
そして、1年後の10,000円を、現在の価値にしようとすることを「割引」といいます。
具体的には、上記の計算式とは逆のことを行えばよく、1年後の10,000円を1.1で割れば、現在の価値に直すことができます。
10,000円 ÷ 1.1 = 9,091円
このことから、1年後の10,000円は、現在の価値に直すと、9,091円になることになります。
(なお、9,091円を1.1で掛ければ、10,000円になります。)
このように、将来の価値に対して、金利で割り算などをして、現在の価値に直すことを「割引」と言います。そしてこの直した価値を「現在割引価値」と呼ばれます。
なお、この際の金利を「割引率」と言います。
この例では、9,091円が現在割引価値、割引率は10%となります。
2年後の現在割引価値
次に、2年後の現在割引価値を考えてみましょう。
金利を上記と同じ10%とします。複利計算で考えた場合、現在の10,000円は、次のようになります。
10,000円 × 1.1 × 1.1 = 12,100円
つまり、現在の10,000円に1.1を2回掛けた値が、2年後の価値になります。
ということは、2年後の価値を現在の戻すには、1.1を2回割り算すればいいことになります。
10,000円 ÷ 1.1 ÷ 1.1 = 8,264円
ちなみに、現在の価値が8,264円ならば、2年後には
8,264円 × 1.1 × 1.1 = 9,999円(上記の2年後の割り算の結果、小数点を切り落としたので、1円誤差が出てますが…)
となり、現在の8,264円は、2年後の10,000円に等しいことが分かります。
t年後の現在割引価値
上記の例から、次のことが分かると思います。
1年後 … 1回割り算
2年後 … 2回割り算
ということは、t年後の現在割引価値を出すには、t回割り算をすれば、計算できることが分かります。
少し数学的になりますが、$ t$年後の金額を$ A_t$、金利を$ r$とすると、次のような式で計算できます。
t年後の現在割引価値 = $ \dfrac{A_t}{(1+r)^t}$
ここで、$ \frac{1}{(1+r)^t}$は、$ 1+r$で$ t$回、割り算することを表しています。
補足
この割引という概念は、元々は商慣習から来ています。
3か月後にお金がもらえる手形(受取手形)をもっていたとしましょう。
しかし、お金が必要なので、その期限前に銀行に行けば、その手形を現金に換えてもらうことができます。
ただ、期限前なので、その間の金利分を差し引いた分の現金となります。
いわゆる「手形の割引」というものです。